明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ5)

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180.ずっと。ページ5

静香さんはその日の昼休憩の時に、他のスタッフにも辞める事を報告して

その日に居なかったスタッフには後日、順々に伝えて

新しい仕事の準備もあるからと、出勤の頻度が減って行った。

そして、月末に行われた静香さんの送別会。

櫻井さんの時と同じ居酒屋、同じ部屋。

私と相葉くんは、やっぱり隣同士で座ってたんだけど

途中で「最後だし、隣行っちゃおうかな...」って言う相葉くんの背中をバンっと叩いて送り出した。

お酒もたくさん飲んでた相葉くんは、静香さんと楽しそうに話してて

だけど、静香さんのお別れの挨拶が終わったら彼は突然立ち上がって

泣きながら、彼女を抱き締めた。

皆が「もう、相葉ちゃーん！」って笑ってて

静香さんも「雅紀くん、酔っちゃった？」って笑ってて

だけど、私だけは笑えなくて

相葉くんの気持ちを想うと辛くて、変な顔になっちゃって

私が相葉くんを好きだと勘違いしたままの静香さんは、変な顔の私を見て「ほらほらぁ！しっかりしなさい！」って、相葉くんの腕の中をすり抜けた。

グズグズになった相葉くんは、照れ隠しみたいにアハーって笑って

「ダメだぁ、酔っちゃった！」

って、その場にペタンと座り込んでおしぼりで顔を隠した。

その後すぐに静香さんが厨房のメンバーに連れてかれて

静香さんは相葉くんを気にして「雅紀くん、大丈夫？」って声を掛けたけど、彼は「うん！大丈夫ー！」って顔を伏せたままピース。

這いつくばって相葉くんの前まで行く。

「...あーいっばくーん」

壁にもたれてる彼の、立てられてる膝を指でツンツン。

おしぼりから真っ赤な目をチラッと出した相葉くんは

「アハハッ、泣いちった」

笑って言ったけど、眉間に皺を寄せてまたおしぼりに顔を埋めた。

その数分後には、会はお開きになって

みんな静香さんとの別れを惜しみながら、散り散りに帰って行く。

「別に引っ越す訳じゃないし、桜にご飯食べに行くからね！」

そう明るく笑って、手を振る静香さんに相葉くんが駆け寄る。

「静香さん、俺ホント楽しかったよ！今まで、ありがとう！」
「私こそ...相葉くんにはいっぱい助けて貰ったね。...ありがと」

握手をした2人は、きっと2人にしか分からないこれまでの時間を思って

静香さんはもう一度「ありがとう」って小さな声で呟いた。

バイバイ、って背を向けた静香さんを

相葉くんはずっと、ずっとずっと

見えなくなってもまだ、見つめてた。