明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ6)

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181.夜道。ページ6

スンッ、って相葉くんが鼻をすする。

両手で、顔をスルッと撫でてハァ...と大きく息を吐き出す。

「終わった」

相葉くんの、特徴のある声。

いつもは明るく響く声が、今は切ない。

「やっと終わった」
「......」
「俺のながーい片想い」
「......」
「もっとハッピーエンドを夢みてたんだけどなぁ」

その横顔は、まだ静香さんが帰って行った方向を見てて

まばたきが増えた目で、ずっと見てて

私は何も言えずに、その隣に立ってた。

「あ...ごめんね、行こっか...」
「うん。今日は私が相葉くんを送ってあげようか？」
「フフッ、その気持ちだけで充分だよ」

こんな時でも、彼は私を送ってくれるみたいで

もう何度一緒に歩いたか分からない道を、二人で歩く。

深夜のこの時間、平和なロマドーにはほぼ人が居ない。

足音だけが響く。

「Aちゃん...」
「ん？」

相葉くんが立ち止まったから、私も立ち止まって彼を見上げると

その目には、薄く水の膜が張っていた。

「もうちょっとだけ...メソメソしても良い...？」

そう言って俯いた相葉くんの頭を、ポンポンと撫でる。

「仕方無いなぁ。メソメソでも、ウジウジでもしたら良いよ」
「...ありがと...」

私の手を握って

顔を上げる事は無く

肩を静かに上下させて

何度も鼻をすすって

小さく開いた口からは、小さな嗚咽が漏れる。

それが落ち着いて来た頃、彼は「あー...やだ...」って呟いた。

「......泣くの...しんど...」
「うん、苦しいよね」
「鼻...っ、詰まる...」
「口で息してね」
「ヒッヒッ...フー...ヒッヒッ...フー...」
「相葉くん。それ、赤ちゃん産まれちゃう」
「間違った...」

フフッ、て相葉くんが笑う。
グズッて鼻をすすりながら。

私も笑う。
相葉くんの頭を撫でながら。

そしたら握られてた手を、グッと引っ張られて

柔らかく抱き締められた。

お酒と、タバコの匂い。

「Aちゃん、ありがと」
「ううん」
「あ...、安心して？こんな事してるけど、オスマサキは出て来ないから」
「フフッ、分かってるよ」

相葉くんの背中をトントン、トントンって赤ちゃんにするみたいに軽く叩くと

彼は「男なのにー...カッコ悪いー...」って、また少しだけ泣いた。

いつも笑ってるけど、本当は泣き虫な相葉くんが

たくさんたくさん泣いて

長い片想いに終止符を打った。

伝える事の無かった真っ直ぐな想いを

その涙と一緒に、手離した。