明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ7)

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182.何か御用。ページ7

静香さんが桜を辞めて

桜の社員になる準備！って相葉くんの髪が真っ黒になって

新しくできたマンションに引っ越して来た人達が、こぞって潤さんのファンになって

三十四のメニューにプリンが正式加入した秋の半ば。

仕事を終えて家に帰ると、うちのドアの前に誰かが立ってた。

何度もチャイムを押して、唇を尖がらせてる。

「うちに何か御用ですか？」

とんがり口のその人に声を掛けると、その口のままこっちを向いた。

「御用があるから来てんだろ？」
「...嫌な予感しかしないんだけど」
「うそー、素敵な予感しか無いだろ？」
「私が二宮くんから受けた意地悪の数々...一個ずつ思い出させてあげたいよ」

疲れた顔で二宮くんを見たら、クフッて笑う。
疲れ？なにそれ美味しいの？みたいな笑顔。

「なぁ、A。腹減ってない？」
「え？賄い食べたから別に...」
「まぁお前が腹減ってようが、満腹だろうがどっちでも良いんだけどさ」
「じゃあ何故訊いた」
「これ、一緒に食ってくんね？」

私の質問なんて最初から答える気も無さそうな二宮くんが、持ってた紙袋を私に突き出す。

「何？これ」

紙袋を覗き込むと、タッパー。
でも中身までは分からない。

「だんご」
「だんご？」
「そ。だんご、好き？」
「甘い物は何でも好き」
「あー、だからお前の顔は丸いのか」

ギロッとひと睨みすると、肩をキュッと上げて口角を下げる。

「百合子さんがいっぱい作ったから持ってけって」
「あ、実家行ってたんだ」
「亮がオレに会いたいってうるさいからさぁ」
「自分が会いたいくせにぃ」

今度は二宮くんが私をギロッとひと睨み。
元々の顔が女子っぽいからなのか分からないけど、そんなに厳つくない。
ってか、ちょっとしゃくれてるし。何、その顎。

「フフッ」

しゃくれた顎がツボにハマって笑った私の腕をポコッと軽く叩いて二宮くんも笑う。

「食おうよ、だんご。1人じゃこんなに食えねぇんだって」
「良いけど...どこで？」

ん、って小さく言った彼が人差し指を立てた。
その指を上に向かってツンツンと動かす。

「上？」
「うん、上」
「...二宮くんち？」

いやいや...何も無いのは分かってるけどね？
でもこないだあんな事があって「ガード緩い」って言われたのに、ホイホイ部屋に上がれる程バカじゃないよ？

「オレんちじゃないよ」
「え？」
「ま、来てよ」

二宮くんは呆然としてる私の横をスタスタ通り過ぎて、エレベーターの方に歩いて行った。