明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ12)

今日:9 hit、昨日:3 hit、合計:958,849 hit

187.パーカー。ページ12

自分のマヌケさと、浅ましさを恥じながら残ってたビールも飲み干す。

お団子は少し残ってたけど、二宮くんに「A、持って帰れば？」ってタッパーごと渡された。

「良いの？」
「うん。オレ、もう食えないし。多分、明日の朝飯くらいまでにはなるんじゃない？百合子さん、そんな事言ってた気がする」
「ありがと、頂きます」

タッパーを受け取った瞬間、風がビュウっと吹いた。

「さっむ...」

もう秋なんだな...と妙に実感して、実感した瞬間余計に寒く感じる。

「んー、ひょっほはっへよ？」
「え？」

二本目の煙草に火を点けた二宮くんが何か言ったんだけど、...分かんない。

彼が咥え煙草でパーカーを脱いで、立ち上がる。

そして目の前に立って、私の背中側に腕を回してパーカーを肩に掛けてくれた。

「あ...えっと...」

彼を見上げてる私を見下ろしながら、加えてた煙草を外す。

「着てろよ」
「え...でも...」
「風邪ひかれたら困るし」

喋る口元から、フワフワと白い煙が漏れ出してる。

「オレが夜中にこんなトコに連れ出したからだ！とか言われそうだし！」
「そんな事言わないよ！」
「ホントー？」
「私、そんな理不尽じゃないし」
「オレなら言うけどなぁ」

うん、言いそう。
容易に想像できる。

二宮くんが、また私の隣にドスンと勢いよく座った。

「ま、でも風邪ひかれたら困るのはホントだし」

仰け反るように背凭れにもたれて、脚を組んでる。
偉そうな態度。
なのに、言ってる事はちょっと優しいとか。変な人。

肩に掛けられたパーカーからは、男の子の匂い。
相葉くんとは違う、煙草の匂いと香水の匂い。

「あったかい...です」
「そりゃ良かった」

でも私より、ずっと薄っぺらい二宮くんの方が寒そうに見えるけど...

「二宮くん、風邪ひかないでよ？」
「ひいたら『Aに服剥ぎ取られたからだ！』って言うから大丈夫」
「何が大丈夫なの？それ」

二人で笑って、何となく月を見上げた。

「綺麗ですなぁ」
「うん...」
「秋の月は秀逸だな」
「そうだね」
「あ。そうだ」

二宮くんが「ちょっと失礼」って私が掛けてるパーカーのポケットに手を突っ込む。

ポッケに入れてた何かを探してるんだろうけど......近い！
頭のてっぺんの髪が口に当たってくすぐったい！

「あれ？あっちだったかな...失礼」

逆サイドのポケットを探ろうとした彼の片手が肩に乗せられて

そのまま二宮くんの身体が、私に覆い被さって来た。