明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ11)

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186.日本人の心。ページ11

空き缶を灰皿にして、二宮くんはその中に煙草の灰を落とす。

「相葉くんも、知らないの？」
「うん。言ってない」
「何で？」
「だってアイツ、こんな場所があるの知ったら絶対に入り浸るでしょ？オレが一人になりたい時に使ってんのに」
「フフッ。確かに」

相葉くん、『秘密基地』って言葉好きそうだし。

でも...じゃあ、何で私には教えてくれた？
あんなに仲良しな相葉くんにも、言ってない場所なのに...

お団子を食べながら隣を見たら、思いがけず二宮くんもこっちを見てて目が合った。

「ンゲホッ！！」
「はぁ？もう、何やってんの？ビール、まだある？...あ、良かった残ってる。早く流し込め」
「ゲホッ...」

ビックリした拍子にお団子が喉に詰まって噎せてると、呆れた表情を見せながら私が飲んでたビールを口元まで持って来てくれる。

それを受け取って喉のお団子を流してると、「はいはい、おじいちゃん落ち着いてね」なんて言いながら背中を撫でてくれたんだけど...

「あの...せめておばあちゃんにして...」
「だって、何かオッサン臭いんだもん。Aって」

女子力高い男子に、『オッサン』だ『おじいちゃん』だと言われる屈辱。

「...二宮くん...」
「ん？もう大丈夫？」
「あ、うん、それは大丈夫なんだけど...あのさ」
「うん。どした？」

何だ。

何か、ちょっとドキドキする。

「どうして...私にここ、教えてくれたの...？」

二宮くんが、キョトンとした顔をする。
そして、少し唇を尖らせて視線を下げた。

...やめてやめて！
そんな顔しないで！
ザワザワするから！何か、ザワザワするから！

「それは...だって...」

舌足らずな喋り方が、いつもより更にモゴモゴしてる。

「団子っつったら、月見でしょ」

女の子より綺麗に上がる口角。

「......は？」
「やっぱさー、日本人の心？」
「...あ、それで...？お月見する為か...」
「うん。そうだけど」

......自惚れた。
完全に自惚れてた！
これは、恥ずかしいヤツ！！

「何で？」
「えっ！？いや...ほら！相葉くんも知らないのに私が教えて貰っちゃって良いのかなー！？って思ったから！」
「Aだったら入り浸らないでしょ？」
「ま...まぁ、うん...」

もしかして二宮くんてば、私のコトを...？なんて、1ミリでも思ってしまった自分を呪いたい。
私なんて、鼻の下を蚊に刺されてマヌケな顔になってしまえ！

「ンフフ、どったの。Aすっげマヌケ面」

既にマヌケだったか...。