今回は一松兄さんでシリアス!
闇を抱えてそうだな、と思ったら勝手に指が動いてました。
書いててちょっとしんどいシーンもありましたが。
見てくださったら幸いです。
良ければコメとか評価とか…
カスイ様から素敵なCSSをお借りしました!
http://uranai.nosv.org/u.php/novel/h2o2xxx_00/
追記
ホムペの分、まとめない、と言いながらもまとめてきました…。
Epilogue、Another storyも追加してます!
http://uranai.nosv.org/u.php/novel/satisfy1/?fcnew=1
小さいころは、そう言われるのが嬉しかった。
決して悪戯をしなかった、というわけでは無いけど、俺はできるだけそう言われるように行動した。
それに、一つ下の十四松はこの時気が小さく、俺が守ってやらなければ、と思ったからかもしれない。
中学生くらいの頃。
相変わらず、「真面目だよね」と言ってくれる人の裏で、黒い波が立ち始めた。
「ほかの兄弟は皆明るいのに」
「一松くんって、なんであんなに暗いの」
「面白くない」
「何真面目ぶってんだよ」
無言の威圧は、次第に俺の首を絞めていった。
中には、言葉ではなく手を出してくる奴もいた。
そういう時には上の兄さん達が倒していたが、それが逆効果をうみ、影でエスカレートしていった。
そのうち俺は、「真面目」でいることを止めた。
疲れたんだ、頑張ることに。
過去は未だに悪夢として俺に襲いかかり、生きる気力を削った。
何も評価してもらえない、寧ろ辛いだけの生き方なら。
一「……いないほうがいいんじゃねぇの、俺…。」
ただ、いい子だって言われたかった。
優しい人だと思われたかった。
弟を守れるような、強い僕でありたかった。
ただ、それだけのことなのに。
何故目を閉じて、
耳を塞いで、
呼吸もできないほどに僕は追い込まれたんだろう。
ふと思いったった僕は、台所へと歩いた。
包丁を持ち出して喉元にあててみると、なんだかぞくりとして。
まだ、自分が生きることを望んでいることに、ぎりりと歯ぎしりした。
また、今日も。
「はははっ、お前の兄貴共はあんなに強かったのにな〜?」
同じことを繰り返される。
地獄の時間だ。
日が暮れるまで終わることのない、一方的な暴力。
痛くて、きつくて、でも俺は薄く笑っていた。
笑うしかなかった。
それが「何笑ってんだよ」と殴られる原因になるのは承知の上。
でも、こいつらに泣き顔だけは晒したくなかった。
「チッ、じゃあ一松くん〜。
これで切っても笑ってられる?」
見せられたのは、果物ナイフ。
刃物。
だが、あの時のような恐怖はこなくって。
ふぅ、と息を吐いてから、
僕はこう言った。
一「……いいよ、一思いに心臓にでも刺したら?」
嘲笑うように言ったため、男の逆鱗に触れたのだろう。
下唇を噛むと、男は「そーかそーか」と楽し気にナイフを弄んだ。
「じゃあ、元気でなぁ。
一松くん。」
あぁ、俺はこんなところで死ぬんだなって。
だけど、苦しみながら生きるよりずっといい。
それが、僕の今の望みだから。
僕は目をつむって上を向く。
ごめん、……皆。
十「どっせーい!!」
突然聞こえた、黄色の声。
驚いた男は、ナイフを取り落とした。
十「ねぇねぇ、お兄さん。
なんでこんなもの、僕の兄さんに向けてたの?」
「ま、松野の5番目…っ。」
十「ボールになる準備って、もちろんできてるよね?」
金属バットを構えた弟は、僕には眩しすぎて。
一「……守られる側だったくせに。」
十「ほら、早く来てよ。
お兄さん達と野球できるの、すっげー楽しみなんだから!!」
言葉とは相反し、いつも焦点の合わない目は確実に男を捉えていた。
「…っ、お、お前ら帰るぞ!!」
十四松におびえた男たちは、脱兎のごとく逃げていった。
一「十四松……。」
カランカランッ
十四松は、金属バットを放り投げ俺に抱き着いた。
一「痛いって、十四松……。」
十「よかった、一松兄さん!!」
一「…はぁ?」
十「もう泣かないで、溜め込まないで、
いなくならないでよ、兄さん…!!!」
それから、声をあげて彼は泣く。
いなくならないで、という言葉が胸にすとんと落ちて。
一「…っ、分かったから、もう、泣くなよ……っ。」
泣くなよ、とは言いながらも、僕も声を殺して泣いた。
あの日から数年がたって。
あれから俺は本当に真面目ではなくなった。
まだ自分が生きてていいのか、と考えたくなるときもあるし、悪夢を見ることもまだ多々ある。
――それでも
十「一松兄さん、素振りしよ!!」
今日も明るく笑う弟。
俺が影だとしたら、あいつは光だ。
反対であるはずなのに、あいつはいつも俺の近くにいてくれる。
俺らは、互いに必要不可欠な存在なのかもしれない。
それに、もう俺は十四松を泣かせたくはない。
一「へーへー…、じゃあバットに括り付けてもらえますかね、十四松さん。」
十「了解でっせ、一松兄さん!」
そんなこんなで、今僕は生きている。
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H.Y - すごくいい話だと思います!!さすが!神ですね!!!! (2017年5月20日 0時) (レス) id: 00ddd4f313 (このIDを非表示/違反報告)
黒兎(プロフ) - クリームにゃんさん» 僕を神だと言ったら、世界が崩壊するってww (2017年1月20日 23時) (レス) id: 2172f3f018 (このIDを非表示/違反報告)
黒兎(プロフ) - はるさん» わわつ、ありがとうございます!数字はホントに尊いですよ…… (2017年1月20日 23時) (レス) id: 2172f3f018 (このIDを非表示/違反報告)
クリームにゃん(プロフ) - 面白いっす!やっぱ神の書く作品はすごいなぁー (2017年1月20日 23時) (レス) id: d2ef7ec737 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 夜中に失礼します。読ませていただきました。この2人も好きだし、シリアスな話も好きなので、凄くよかったです!読んでて悲しくなりました(泣)それと、2人が何だか可愛かったです!では失礼します。 (2017年1月19日 0時) (レス) id: 674085e382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒兎 | 作成日時:2017年1月11日 23時