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『おそくん、すきだよ』って



ぎゅってされるよりも


ちゅーしてもらうよりも



たったひとことでいいんだよ、俺は。





長男とせまいお部屋にての続き
▽長男ニート卒業結婚してます



*special thanks*


くーちゃん


*



「…ほんと、お前ばかなの?」

『えへへ』



仕事帰り、駅でかわいい彼女を発見。
雨降ってたから迎え来たよと笑う君。



赤い傘が右手に1本。なのにずぶ濡れ。



彼女いわく道中雷が鳴ったので傘を閉じて
ぱたぱた健気に走って駅まで来たらしい。



「風邪引いちゃ意味ないでしょーが」

『んーん、私は大丈…くしゅんっ!』

「ほらみろ」



長く伸ばしたいつもはふわふわの髪が
ストレートになっちゃうほど濡れてる。
はやく帰って頭拭いてやらねーと。



「はやく帰んぞ」

『うん』



彼女の右手から真っ赤な傘を受け取って
もう片方の手でひとまわり小さな手を握る。


キンキンに冷えたその手を温めるように
ぎゅっと握りなおすと、いたいよと笑った。

薬指に触れた金属の感触がくすぐったかった。



『晩御飯なににしよっか』

「何かあったけーもん」

『うーん…シチューにする?』

「ナイス」



傘の下を肩が触れる距離で並んで歩く。
おんなじ柔軟剤使ってるはずなのに
彼女だけあまい匂いすんのは永遠の疑問。



『あとあと、今日はドーナツ作ったの』

「お!マジで?」

『お豆腐入れたからふわふわだよ』

「デザートにもらお」

『うん』



握ってる手がだんだん温まる。

俺の体温が移ってんだと思うと
なんとなーくうれしかった。うん。



『雨強くなってきたねー』

「な」

『お家でみる雨は好きなのになぁ』

「そーお?俺はあんまし」



パチンコとか競馬行く気なくすし。
いやいや結婚してから控えてるけど。

稼いだ金は愛する嫁に捧げたい。



『絵とかだったら素敵なのに』

「オンナノコだねぇ」

『ふふふ』



白い並びの綺麗な歯を見せて笑うコイツは
もしかしたら俺に似てきたのかもしれない。


天性のゆるふわは直んないんだけど
ちょっとずつちょっとずつ変わってる。
冗談通じるよーになったのは進歩だ。



『おそくん』



出た、俺が世界一好きな四文字。


ちなみにお前限定です。なんだそれ。
このテンポが、トーンが、いっちゃん好き。
あー結婚してから浮かれてんなぁ…。



「はいはい何ですか」

『スーパー寄ってこうよ』

「お前ずぶ濡れじゃん」

『ゼリーかプリン食べたいな』

「んなの俺があとで買っ」

『おそくんと一緒がいい、もん』



ぎゅむ、繋いだ手に力がこもる。
そーんな上目使いずるいよなぁ。


そんな顔されたら行っちゃうよなぁ。



「いいよ、ゼリーもプリンも買お」

『おそくん優しい』

「おそくんは優しいよ〜」

『うん』



閉店前のスーパー赤塚に入って
灰色のカゴをカートにセットした。


ほんとはカゴは持った方が無駄遣い
しなくていいってTVでやってたけど
まぁいいや。多分そんな変わんないし。



『ん〜…』



デザートコーナーの前でうろうろする
彼女は蜜柑ゼリーか桃ゼリーかで悩み中。
その間にドラえもんのプリンをカゴにぽい。



「決まった?」

『う……蜜柑の、にする』

「プリンこれでいい?」

『うん!それがいい』



あぁ、なんでそんなかわいいの。
コイツってほんとに成人女性なの?


レジで支払いを済ませるとエコバックを
持った彼女がさくさく中に品物を入れてく。
こういうとこはしっかりしてんの。すき。



「ちゃっちゃと家帰ろ」

『うん』

「嫁さんのシチュー楽しみ」

『そんな楽しみにしないで』

「いっつもうめーから」

『おそくんお外だよ』



恥ずかしいなぁもうと微笑む彼女に
若干むらっと来ちゃうのは仕方ない。


結婚して何度も一緒に寝てるんだけど
未だにやらしーことは何もできてない。
今晩のお相手も多分この右手なんだろう。



「帰ったらあっつい風呂入ろうな」

『うん』



震えて身構えちゃう彼女に無理強い
なんてできねーし仕方ねぇじゃん。


まだ彼女の100パーの信頼はもらえてない。
落ち度は俺にあるんだからと欲を飲み込む。



『雨止んだね』

「な」



雨の止んだ空には満月が俺らを見てて
どうにも勇気のでない俺を黄色い円が
静かにねちっこく見下していた。



いいんだよ、まだ時間はあるんだし。


ゆっくり、ゆっくり溶けてけばいい。







数分歩けば愛しの我が家に到着。
愛しの嫁さんとドアを開けてただいま。
この俺が都内に一軒家だぜ?すごくね?



「ちと待ってて」

『うん』



彼女より先に家に上がって洗面所へ。
ふかふかのタオルを一枚取って戻る。


彼女の濡れた髪にタオルを押し付け
少し雑にわしゃわしゃと拭いてやる。
崩れた髪からふわり、あまい香りがした。



『おそくん』

「なに」

『シチューすぐ作るからね』

「おう、楽しみにしてんね」

『…んもう』



白い額に唇を押し付ければくすりと笑う。
おまけに小さな唇にも同じことをすれば
ぽぽぽっと顔を赤くしてキッチンに消えた。



「手ぇ洗お」



洗面所の洗濯機の前の籠にタオルを
放り、手を洗ってればもういい匂い。
彼女は料理上手だ。流石はオンナノコ。

じゅうぅという音は肉を焼いてる音だろう。



そのいい匂いに誘われるように
まだ綺麗なキッチンへと足を運び
エプロン姿の嫁を後ろから抱き締めた。



『!おそくん』

「旦那サマも手伝いましょーか」

『休んでていいのに』

「今日は手伝いたい気分なのー」

『じゃあ玉ねぎの皮剥いて』

「ん」



受け取った玉ねぎの皮を剥いてく。
茶色の皮をめくりつつ手際よく調理を
進めてくかわいい彼女の後ろ姿を眺めた。







『いただきます』

「いただきまーす」



並んで食べる晩御飯。


これほどうまい飯はないんじゃないか。
どんなにうまい飯も高い飯も、彼女の
料理には敵わないと断言できるよ俺は。



『おいしい?おそくん』

「超うめぇ」

『ほんと?ならよかった』



上品にシチューを食べる彼女とは違い
俺はがつがつ米とシチューを口に流す。
これでもちゃんと味わってるかんね?



『おそくん、お口についてるよ』

「え」

『そんなにがつがつ食べるから…』



くすくす笑いながら細い人差し指が
俺の口許を下から上へ優しく撫であげた。

流れるような動きで汚れた人差し指を
小さな口に運ぶ姿は妙にやらしい。



「あんがと」

『うん』



顔がぼんやり熱くなってくのを隠すように
また、がつがつ器のなかみを口に押し込んだ。









『おやすみ、おそくん』

「おやすみぃ」

『ふふ』



風呂入って歯もみがいて、皿も洗った。
もうこうなったらあとは寝るだけだろ。
ひとつのベッドに並んで寝転ぶ。


眠気を含んだあまったるい声が
俺の鼓膜を小さくゆらした。



「……はぁ」



トイレに溜まった熱を出しに行こうと
こっそりベッドからおりれば、くっと
俺のパジャマの裾を小さく引かれる。



『……おそくん、やだよ』

「いやいやトイレだし」



ちょ、今そうやって掴まれるとまずい。



『やだやだ』

「やだってお前…」



そういってる間に彼女も起き上がり
後ろから俺にのそのそと抱きついた。



『ごめんなさい』

「急になに謝って…」

『ほんとは分かってたの』



ぐす、鼻をすする音がして彼女の額が
俺の肩口にぐりぐり押しつけられる。



『いっぱい我慢させてごめんなさい』

「いんだよべつに、無理強いしたくねーし」

『もう、大丈夫、だから』

「でも泣いてんじゃん」

『そういう涙じゃないもん』

「はぁ…」



どうしてこの子は俺の必死の我慢を
こうも一瞬で崩してしまえるのか。

それは俺がこの子に惚れてるからなんだけど。



「途中でとめらんねーけど」

『いいよ』

「泣いてもやめねぇし」

『だいじょぶ、です』



ぐずる彼女を正面から抱き締めて
小さな背中をぽんぽんさすさす。
あーもう、ほんとに赤ん坊かっての。


涙を溜めた瞳と汗ばんだ額にに口付ければ
あぅ、なんてかわいい小さな声を漏らした。



「あーほんと好き、もうバカ」

『えっえっ???』

「ちょー大事に抱くから覚悟して」

『う、うん…ッ!』



ほんともう、かわいくてしゃーない。



ベッドの上で正座する彼女を抱き締め直し
そのままシーツの海にふたりで沈んだ。






*長男とゆるふわ奥さま*


くーちゃんからリク戴きました!感謝!
こうやってまたふたりを書けて嬉しいです。

これの続きも書くかも知れませんが
いまのところは読者さんのご想像に
おまかせします( `・ω・´ )


ありがとうございました!


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小豆せんべい(プロフ) - 黒糖団子さん» 笑← こちらこそこちらこ(無限ループ) 私がゆるふわとは程遠い世界にすんでるから()、なんか自分の名前で読んでるけどゆるふわ彼女と兄様のいちゃらぶをニヤけながら読んでる感じかな…!(漂う犯罪臭) なんか話すの久しぶりだ…! (2016年8月27日 20時) (携帯から) (レス) id: 8e2125a1a2 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖団子(プロフ) - おとうふさん» くーちゃんこちらこそ〜!わー!お豆腐気づいてくれて嬉しいです細かいとこまで読んでくれてありがとう(*´∀`*)私もくーちゃん大好き愛してるよー! (2016年8月27日 19時) (レス) id: 75481162f8 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖団子(プロフ) - 小豆せんべいさん» 問題発言(笑)こちらこそありがとう〜!癒しになれてるのならよかった!ゆるふわ彼女は私もかわいいと思ってます( `・ω・´ )かわいいと思いながら書いてます。カリレジェ書くの楽しい…。 (2016年8月27日 19時) (レス) id: 75481162f8 (このIDを非表示/違反報告)
おとうふ(プロフ) - 先輩本当にありがとうございます( ̄^ ̄)ゞドーナッツにお豆腐入ってんのとか色々もうなんかなんて言ったらいいかわからないけど嬉しいです>_<本当にありがとうございます(´Д` )先輩大好き愛してる\(^o^)/ (2016年7月25日 21時) (レス) id: 8814755d68 (このIDを非表示/違反報告)
小豆せんべい(プロフ) - カリレジェ兄さん最高だね!() いやもう彼女かわいすぎて私が彼氏になりたいよ…(問題発言) なんか映画みたいで素敵だなって…&a いつも癒しをありがとうヽ(○`・v・)/ (2016年7月25日 7時) (携帯から) (レス) id: 8e2125a1a2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒糖団子 | 作成日時:2016年7月24日 15時

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