【RKRN】 命の火が消えたとしても

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最期まで、君を - 2025年5月23日

……熱い。

　火柱がたち、火の粉が降り注ぐ。煙を吸ったせいで息が苦しい。

　もうすぐ逃げ道が塞がれてしまう。その前に、なんとかYOUさんを逃がさなければ……

　「YOU様!! 絶対に離れないようにしてください!!」
　「はい！」

　不安げに、俺の腕に手が添えられた。弱々しく、だが確かに、YOUさんはそこで息をしている。

　YOUさんを抱き寄せ、俺はまだ通れる場所を目で探した。

　ーーあった。

　燃え盛る火の中、微かに夜の闇が見える。
　YOUさんの命を繋ぐ、一本道。ここしかない。

　しかし一歩踏み出したところで、天井がミシミシと嫌な音を立てた。
　しまったと思ったときにはもう遅く、俺は走り出していた。それと同時に、天井が崩れ落ちてくる。

　……間に合わない。

　そう直感した俺に、迷っている暇なんか無かった。

　「……申し訳ありません」

　俺は、YOUさんの身体を闇の中に放り投げた。
　主を投げ出すこの愚行は、許されるだろうか。

　「きゃあっ!!」

　小さな悲鳴が上がる。

　なんとか、YOUさんは外に出ることができたようだ。
　その姿をとらえたのを最後に、俺の視界は真っ赤に染まった。

　燃える瓦礫の下敷きになり、俺はもう身動きが取れない。
　熱さしか、感じられなくなった。

　「なんてことを……!! 返事をして!! お願い!!」

　YOUさんの声が聞こえる。
　だが、炎や瓦礫で向こう側が見えない。

　「……逃げてください」

　そう言おうとしても、大きな声が出ない。

　「すぐに、すぐに助けるから!!」
　「やめろ!!」

　喉が引き裂かれるように痛かった。血を吐くが、それでも彼女を逃がさなければならない。

　「逃げろ!! 逃げてくれ!! 頼むから……」

　貴女はここで死んではならない。

　「しかし……！」
　「いいか！ 追っ手は潮江さんが止めてくださっている。皆貴女を生かすために戦っている。貴女は生きなければならない存在なんだ!! だから行ってくれ!!」

　それきり、声が出なくなった。

　だが俺は確かに、走り去る足音を聞いた。

　……よかった。

　心から安心する。

　貴女を逃がしたのは、何も任務のためだけではない。貴女は潮江さんに想いを寄せていたが、俺は……ずっと貴女が好きだったから。

　届かなくても、貴女の命を守るのが、俺の使命だから。

　でも……

　「伝えたかったな……」

　そこで俺の意識は途絶えた。

　浜守一郎 『焦がれる恋心』

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