【黄瀬涼太】星の座る場所 ★ ﾃﾞﾈﾌﾞ ★

◆神話の様な英雄は普通と呼ばれる人間だった◆ ページ2

細い首、綺麗な手の甲、柔らかな頬に口付けを落とす。



少しずつ、愛を伝えていく。



嫌そうな声を漏らすﾓﾉの、拒みはしない。



それはきっと、彼女も長い間、望んでいたからだ。



黄瀬と気持ちを交わすこの瞬間を。



人はなぜ愛する人に唇を重ねるのか。



愛の言葉を囁くだけでは足りないというのか



否、足りないという問題では無く、人間は身体を重ねる事で漸く愛に気付けるのだ。



それは人間の本能的な行動であり、こればかりはどうしようもない



筈だった。



人間から機械へと変えられた人間は、何を基本に愛を伝えればいいというのか



機械同士ならともかく、機械は人間の愛をどうすれば受け取る事が出来るというのか



ただ、受け入れる。



ﾒﾃｵは、少し泣きそうになりながら、強く瞼を閉じた。



黄瀬に任せる。全てを｡



そうでもしなければ、愛は分かち合えない。



こんな存在を簡単に産み出してしまう人間は、果たして生きる価値があるだろうか



各国で起こる戦争。餓死に苦しむ子供達。不平等な権利。



人は人を傷付けて、踏みにじらなければ生きていけない



そんな禍々しい生物は、果たして地球上で生きていく必要はあるのだろうか



断じて、無い。



生きていく理由など、在れば最初から人は人を傷付けていない



無のまま、無力なまま、この星に生まれた。



そんな人間は、どうすれば滅びる事が出来るだろうか？



どうすればこの星の一部に為れるのだろうか



もがいて愛を生む事しか出来ないだろう。



命の灯火が消える時まで、足掻く事しか出来ない。そうでもしなければ、産まれた意味も無いのだ



人が人に死ねと呟いて、快感を得ている。



そんな今を、人間は歩んでいる。



成功を夢見て、永遠の光を求めて、闇に突き進んでいる。



どれだけ破壊を可能にする機械を産み出しても



ｷｾｷと呼ばれる結果を残しても



人には死しか待っていない。



だからなのかもしれない。



破壊や死を与える事しか出来ない、愛を夢見る生物は、幸福を噛み締められる代わりに、永遠を与えられない



だからもがく事しか出来ない。



それでいい。



間違ってもどうせ時が経てば人には終わりしか待っていない



ならば、好きと。



愛してると。



囁く事しか出来ない。



それを聞くだけしか出来ない機械。



でも確かに、ﾒﾃｵは黄瀬と何処か強い繋がりを持てていた



それは黄瀬の産んだ愛が、歪みなどない本物だったからだ。

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