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1話 ページ1

「おねーさん、泣いてるの?」


少し鼻につく、私の嫌いな系統の声。


後ろを振り向くと涙で霞んだ目に夕日の逆光に入り交じって、薄い金髪と赤い目が冷たい風と共に揺らいた。

「あはは、ごめんごめん。びっくりした?」
「……誰、なんですか?」

可愛い女の子の泣き声が聞こえたから、思わずね!と張り付けたような笑顔で彼はそう笑った。
コイツはヤバい。と確信し、早歩きで立ち去ろうとしたが、早歩きでニコニコしながら追いかけてくる少年に足掻いても無理だと観念した。




名前は鹿野修哉、私の一個下の17歳だと言う。



「ふーん、Aちゃんって言うんだ!」
「い、言ってないのになんで分かるの…!?」
「だって、ほら。」

ご丁寧にも、私のスクールバッグに先月元彼とお揃いにした「A」と書かれたキーホルダーがついていた。
物に罪は無いとわかっていても無性にフツフツと悲しさから苛立ちが沸きキーホルダーを掴み捨てた。
「こんなものっ……!」
「ど、どうしたの!?!!」

カシャンと音を立てキーホルダーだったものの破片が地面一面に広がる。
破片がキラキラと輝き、まだ形状があった頃よりもその破片は綺麗だと感じた。

小さな震えた声で
「これ、彼氏に貰ったプレゼントだったんだけど、彼、浮気してたんだよね」
と呟く。
言葉に出すだけで貰ったときのことが鮮明にフラッシュバックし、目頭が熱くなる。


「だから泣いてたんだね」



ふと、ぽんぽんと頭を撫でられる。

「僕だったらAちゃんのこともっと幸せに出来るよ」


「……え?」
「なーんて!嘘嘘!」

パッと頭から手を離し、冗談だよと無邪気に笑いかける。




「……冗談なら、本気にしちゃうから、やめてよ」

ポツポツと涙のように言葉が出てくる。


日も暮れそうになり、あんなに眩しかった夕日も消えかかりチラチラと光るくらいだ。


後ろを歩いていた彼は私の前に回り込んで

「じゃあもう少し一緒にいようか。
Aちゃん、僕はまだ一緒にいたいんだけど。ダメかな」

と手を差し伸べた。

また、張り付いた笑顔じゃん。





私は断る理由もなく
彼が差し出した手を取っていた。

2話→



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作者名:さぬこ | 作成日時:2020年2月25日 19時

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