13話 ページ15
「……お前さぁ」
「…ハイ」
現在、四限目の授業が終わって昼休憩。
私はいつものサチと唯との楽しいご飯タイムを奪われ、かわりにこの男と対峙していた。
「いや、別に俺はいいんだけどさぁ?いいの?あんな態度取っちゃって?自分から前みたいな関係に戻りづらくしてるようにしか見えねぇんだけど?」
御幸一也である。
授業終わりに一人でA組まで来て、ご丁寧に営業スマイルを貼り付けて「染谷いる?」とご指名が入ったのは今から十分ほど前。
それから私はB組に連行されて御幸の席に座らされ、とりあえずお弁当を食べ終わり今に至る。
席の主が自分の席に座らず前の席に座って、後ろ向きで私と話しているのはおかしい気もするけど黙っておこう。
机に頬杖をついて煽るような口調で御幸は言った。
まるで沢村くんをイジる時のような口振りだ。
「…知ってるの、昨日のこと」
「知ってるっつーか、小湊が昨日言ってきたんだよ。お前と倉持、あんなに仲良しだったのに喧嘩でもしてるんですか?ってな。だから、面白い話が聞けそうだと思って詳しく聞いちゃったワケ♡」
戯けるように肩を竦めて愉快そうな笑顔を浮かべる御幸。
そうだよね、そういう奴だよね君は。
「…ま、分からなくもないぜ?前まであんなに近ぇ距離で想ってたのに、その好きな奴に途端に彼女が出来たんだ。おまけに、見た目がタイプだっただけで元々好きだったわけでもねぇ子と付き合われたら、そりゃあいい気はしねぇよな」
「…別に、そこは気にしてないよ。どんな子を選んでどんな恋愛しようと倉持の自由だから」
「ふーん。そこは、ね。じゃあ、いつも通りに接せられないから距離置いてんだ?」
御幸はいつもと変わらない感情の読めない飄々とした態度だ。
ただ、この黒縁メガネの奥にある飴色の瞳の底にあるのは純粋な興味や好奇心ではないことだけは分かる。
笑っているけど、怒ってもいて、それでいて心配もしてくれているように感じた。
「まぁ、そんなとこかな。」
「へぇ、そうなんだ。あ、来週の日曜オフになったの知ってるか?」
不自然な話題転換をした御幸。来週の日曜がオフになったとして今の話と何の関係があるのか。
「倉持、いよいよ初デートらしいぜ」
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マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです 丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年8月15日 17時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マカロニ | 作成日時:2020年7月24日 12時