12話 ページ14
《倉持視点》
人生初の彼女ができた。
可愛くて、優しくておまけに健気で、俺にはもったいないほどの女の子だ。
倉持くん、と俺を呼ぶ声は鈴を転がしたようで可愛いしコロコロと変わる表情も可愛い。
内村が作ってきてくれる弁当はうまい。
毎日作るのも大変だろと一度断りを入れたが「会う口実がなくなっちゃうから」と頬を染めて言われてしまえばそれ以上何も言えなかった。
…まあ、ちょっと量が足りなくて教室で焼きそばパンを食ってることは今はまだ内緒だ。
昼休みは一緒に弁当を食って雑談して、たまに駅まで一緒に行ったりして、彼女がいる生活は充実していた。
……が、どうにも様子がおかしいやつが居る。
マネージャーの染谷 A。
前までなら自主練にだってよく付き合ってくれていたし、他愛もない話も毎日していた。
話さない日がないってくらいには。
だというのに、最近は話しかけるとすぐにどっか行っちまうしやけに冷たい。
他のやつには普通だから、俺限定で。
…なんだよ、俺がなんかしたのかよ。
「倉持くん?」
ハッと我にかえると、内村が俺の顔を覗き込んでいた。
「悪い、ボーッとしてた」
「ううん、大丈夫。それより倉持くんって、A組の染谷さんと仲良いよね?」
「えっ、あー、まぁ」
「同じクラスのサッカー部の子が染谷さんのこと好きらしくて、紹介してほしいらしいんだ」
は?染谷を?好き?
あの御幸と知識で渡り合えるようなどうしようもねぇ野球バカを?
たしかに、喋らなかったらまぁ可愛いのかもしんねぇけど。
「悪い、紹介は出来ねぇ」
「えっ、どうして?」
さあな、どうしてかは俺が聞きてぇよ。
ただ、俺にはよそよそしいのに他の誰かとは仲良くしてるなんてとこ、これ以上見たくねぇんだよ。
「あいつ、とんでもねぇ野球バカだからよ。今はそういうのいいって言ってんだ」
「そうなんだ、わかった」
くそ、なんでなんだよ。別にあいつに彼氏が出来ようと俺には関係ねぇことなのに。
なんであいつが他のやつと笑ってるって想像したらこんなにムシャクシャすんだよ。
結局、内村を駅まで送ってもムシャクシャした気持ちは晴れず、俺は寮までの道のりをストレス発散に走って帰ることになった。
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マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです 丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年8月15日 17時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マカロニ | 作成日時:2020年7月24日 12時