8話 ページ10
失恋しても、学校が休みになるわけがなく。
腫れて一重瞼になった目を冷やしてどうにかいつも通りの目に戻して登校した。
そして、昼休みに入った直後。
「おい、染谷。ちょっと来い」
「は?ちょ、倉持!!」
ズカズカと教室に入ってきたかと思うと手首を掴まれ、そのまま教室の外へと連行される。
「なに」
いつもより少し冷たい私の声に倉持は一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに眉間にシワを寄せた。
「昨日、亮さんと何してたんだよ。全然守備練なんてしてなかったじゃねえか」
「…ただ、話聞いてもらってただけだけど。というか、なんで知ってんの?」
「見てたからだよ、上からな」
なに、私泣いてるところ誰かに見られがちじゃない?
もう家以外で泣くのやめよう、絶対に。
「…だから、なに?ごめんね、亮さんの貴重な練習時間をマネージャーが奪っちゃって。もうしないから」
「そんなこと言いてえんじゃねぇんだよ」
不機嫌です、といった様子を隠しもしない倉持。
亮さんの時間を取ってしまったことが原因じゃないなら、なんでこんなに怒ってるんだろう。
倉持が次の言葉を紡ごうと口を開いたとき、C組のドアから女の子が一人出てきてこちらに向かってくるのが見えた。
小さくて、細くて、すごく可愛い。
あれが内村さんか。
はは、想像してたより全然勝ち目ないじゃん。
私と正反対の女の子だ。
小さな手には青い包みに入ったお弁当箱が握られている。きっとお昼を一緒に食べるんだろう。
良いな……じゃなくて。
お邪魔虫は退散しなくては。
「もう用ないなら戻るね」
「は?おい、染谷!!」
背後から「おい!」だの私を引き止める声がしばらく聞こえていたけどしばらくして静かになったから、きっと内村さんとご飯を食べに行ったんだろう。
可愛い上に、お弁当作って持ってくるとか健気。
……ほんと、勝ち目ないなぁ。
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マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです 丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年8月15日 17時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マカロニ | 作成日時:2020年7月24日 12時