花宮、悪童やめたってよ。【霧崎第一】

3.花園事変 ページ9

「たのもーう」


花宮悪童辞任疑惑が解決しないまま数日が経ち、練習後の体育館の扉を大袈裟に開けて登場したのは花園だった。ある意味予想の範囲内すぎてもはや俺は驚けない。


「どう、ザキ！！」

花園はキラキラと目を輝かせ、ドヤ顔でこちらを見ていた。

お前それやりたかっただけだろ…。

そう思いながらもすごい、びっくりしたと驚いたフリをしてやると心底嬉しそうに微笑んだ。相変わらず単純な脳細胞で何よりだ。


けれど、彼女の笑った顔は夏の晴天に咲き誇る向日葵のようで、俺は好きだ。久しぶりにこんな可愛い花園見たし、今日は甘やかしてやっても＿＿

そんな思いで花園の頭に手を伸ばした＿＿


「うーん、どれだ…」


が、久しぶりに彼女にときめいているの俺の横を素通りして、花園はきょろきょろと辺りを見渡した。

だよな、うん、なんとなく分かってたけども。少し涙が滲んできたような気がする俺をよそに、彼女はある人物の前で足を止めて、彼女の目線からは程高い顔を見上げた。


「あっ、死んだ魚の目だから……貴方が古橋くん？」


流石陰で密かに馬鹿の代名詞と言われているだけはある、花園は初対面であるはずの古橋に初っ端からかましていく。

少しはオブラートに包め、という意味を込めてほっぺを抓ると、花園は教えたのお前やん…という目でこちらを睨んできた。いや死んだ魚の目をしてるのが古橋、高校生離れしたホクロが瀬戸って教えたのは俺だけれども。


対する古橋は相変わらずの真顔である。どうしようこれ絶対怒ってるヤツだよ…。


俺たちの間に走る謎の緊張感。先に口を開いたのは、古橋だった。




「誰が顔面リトルマーメイド古橋だ」




思いの他古橋の方がノリノリだった…！コイツ確かギャグとか言うの苦手なのに…！


「ごめん誰もそこまで褒めてない……」


が、珍しく花園がドン引きしていた。
なあ古橋ちょっと目に涙浮かべてるから。真顔の奥底に悲しげな表情が伺えちゃってるから。

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