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2.原くんはちょっと可笑しい。 ページ5

「……あぁ、そうだ、ヤマザキくんだ。山崎くん、少しおいでなさい」


4時間目終了後、花園は1時間目終了後のことが嘘だったかのようなふざけた態度で、俺を空き教室へ連行した。今回は有名企業の社長風らしい。

彼女の目は俺の名前を思い出せた達成感で輝いているが俺を見てから名前を思い出すまでに数秒の間があいたことを俺は忘れない。

花園の手には彼女の弁当、さらには俺の弁当がちゃっかり握られており、一緒に弁当を食べる気満々らしい。俺の弁当は鍵のついたロッカーに入れておいた筈なのだが、ダイヤル番号を花園の誕生日にしていたのをとうとう見抜かれてしまったらしい。

……お願いだから引かないでください。

ちょっと持ってて、と俺に二つの弁当箱を預けると机を二つ向かい合わせにくっつけて、片方に俺を誘導した。

言われるがままに座ると、向かいに花園も腰を下ろす。

こうして俺と花園は、たまに弁当を一緒に食べることがあった。と言っても大体は花園の気まぐれか、花宮と喧嘩したと言って泣きついてくる時くらいだが。

よく考えると俺の振り回され具合が哀れに思えて来た……。


「山崎くん、心して聞くんだよ?」


俺の目を真剣に見つめているが、手元は楽しそうにふりかけをご飯にかけている最中だった。いや器用か。心して話してないのはお前だよ。


「原くんが泣いてた……」


「原って……原里と間違えてないか」


あまり事実とは思えないその言葉に、もう一度問い直す。あの原が泣くって何があったんだ……。

そもそも原の目が見えたのか、と聞きたいところだがあまりにも彼女が深刻そうな表情を浮かべているので、その言葉を飲み込むように唾液を喉へと流し込んだ。


「ううん、あの前髪は確かに原くんだった…」


花園は切なそうに目を伏せて、心底悲しそうに語った。花園にも人の涙で心を動かされることがあるのかと俺は感動で泣きそうになった。


しかしそれ以上に原が泣いたということに衝撃を受ける。

花宮に続いて原もキャラ変更の時期なのだろうか。原は実質前髪が売りなところあるからもうなんでもいいと思う。


「あれは、二限の化学の実験の時間……相変わらず様子の可笑しい花宮を見て、原くん机に顔を伏せて震え出して、起き上がる頃に、制服の袖で涙を…」


原くん可哀想……と悲しげにまつ毛を伏せてご飯を口にいれる花園。
それほど可哀想だと思ってないだろ。

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漫画・声優・アニメ・ゲーム大好きリカント(夜李)(プロフ) - 面白いです!更新待ってます! (2020年10月20日 18時) (レス) id: 7e6458e2b5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 征羅さん» ありがとうございます。面白いと思っていただけるように意識してるので、そう言っていただけるのはとても嬉しいです。返信遅くなってしまってごめんなさい、これからもよろしくお願いします。 (2020年1月26日 19時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
征羅(プロフ) - すごく面白いです。毎回爆笑してます。あからさまに笑いを狙ってないような感じが好きです。今まで俺が見た小説とは違う面白さで、すっかりハマってしまいました!更新頑張ってください。 (2019年10月1日 0時) (レス) id: 44f8e3471a (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - みかんさん» ありがとうございます。受験生なので更新が遅くなってしまいますが、頑張りたいと思います。 (2019年9月23日 20時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 面白いですら楽しく読ませてもらってます。更新頑張ってください! (2019年8月20日 16時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずりは | 作成日時:2019年5月4日 15時

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