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彼女が下を向きかけた時、その視線は途中で止まって何かを捉えた。
そして、分かりやすいほどに体温を失って青ざめていく。
「Aさん、次移動教室だよ」
「アッ、ハイ」
つられて視線をそちらにやると、さっきまで話題の中心であった花宮。俺と花園しかいなかった空き教室を覗くその口元には俺たちはあまり見慣れない笑みがたたえられている。
さらには言葉遣いどころか三人称まで変わっていた。
いやお前誰だよ__そんな俺の心の叫びと共に花園を見ると、彼女も冷や汗を垂らして、魂の抜けたような顔でこちらを見ていた。
昨日まであんなに仲良さげにバァカバァカとお前らは烏かと言いたくなるほどに言い合っていた2人はどこに行ってしまったんだろうか。あ、カラスはアホォ、か。
花園は腕を掴まれて宇宙人さながら花宮に連行されていく。宇宙人といえば土曜ロードショーの宇宙人映画に影響された花園が自電車で空を飛ぼうとしていたことを思い出した。
俺も当然の如く巻き込まれたが、何故か俺が宇宙人の役だった。カゴにはその図体は乗らないからとリアカーを自転車に繋ぎ出した辺りで、この女が将来ロクな奴にならないことを確信し、関わるのはやめようと決心した記憶がある。
まあそれが叶わないから今現在もこうやって巻き込まれてるんだけどな。俺はどこで道を間違えたんだ……。
「じゃ、じゃあね、山城くん!」
そんな遺言を残して、花宮の腕を振りほどいて荷物を取りに行った花園。
この女、もはやわざとか。わざとなのか。敢えて名前を間違え俺の気を引こうとしているのか。そうでも思わないと俺の心は限界だった。そろそろ友達やめようかな…。
「ええと、」
必然的に様子のおかしい花宮と2人きりになってしまって、口ごもってしまう。どうしよう、俺は何を言えばいいんだろうか。いつも花宮といて何かを話そうとか考えたこともなかったが、今回ばかりは状況が違う。
「アイツとここで何してたんだよ」
やはりコイツも俺の心配を杞憂にするのが大好きなようで、あの貼り付けた笑みも、優しい口調も消えた"いつもの"花宮だった。
見た限り、どうやら花宮は偽物ではないらしい。
「ああ、なるほどな」
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漫画・声優・アニメ・ゲーム大好きリカント(夜李)(プロフ) - 面白いです!更新待ってます! (2020年10月20日 18時) (レス) id: 7e6458e2b5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 征羅さん» ありがとうございます。面白いと思っていただけるように意識してるので、そう言っていただけるのはとても嬉しいです。返信遅くなってしまってごめんなさい、これからもよろしくお願いします。 (2020年1月26日 19時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
征羅(プロフ) - すごく面白いです。毎回爆笑してます。あからさまに笑いを狙ってないような感じが好きです。今まで俺が見た小説とは違う面白さで、すっかりハマってしまいました!更新頑張ってください。 (2019年10月1日 0時) (レス) id: 44f8e3471a (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - みかんさん» ありがとうございます。受験生なので更新が遅くなってしまいますが、頑張りたいと思います。 (2019年9月23日 20時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 面白いですら楽しく読ませてもらってます。更新頑張ってください! (2019年8月20日 16時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆずりは | 作成日時:2019年5月4日 15時