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7.アンニュイ ページ24

「ザ、ザキ…!!」

今日は朝練もないし教室でゆっくり瀬戸の課題でも写そうかと思っていたその時、焦った様子でドアを開けたのは原だった。
長い前髪で顔半分が覆われているのもあってか、原は神妙な空気を醸し出している。

「はやく来て、はやくこないと、はなっ、ぞのっちゃんっ、が、」

「おまえ大爆笑じゃねぇか」

何か重大な事件があったのかと思えば、原はいつものように楽しそうだった。原が楽しそうな時はロクなことが起こらないと相場が決まっている。

だがしかし、その話の中に花園が出てくるとまた違ってくる。ロクではない話が一気に怪談くらいにレベルアップする。なんだお前らポケモンかよ。


原に言われるがままに特進クラスへ向かう。入口の扉から見えるのは、花園の後ろ姿だけだった。が、花園マスターの俺の直感が言っている。

「あいつは、いつもの花園じゃない…?」

「いやザキどこの戦闘系少年漫画」

原のツッコミを無視しながら、ドアの横から覗くようにして花園の様子を見つめる。というかまずこの時間、登校時間1時間前に花園がいること自体可笑しいのだ。
いつも遅刻ギリギリに、吉崎、間に合わないから自転車で迎えに来て、という連絡が来るのが常道。朝8時から俺の名前を間違えるのも、もはや熟練技といえる。そんな花園が、この時間にイスに座って大人しくしてるとは。

しかしそれにしても、今日の花園は本当にどんよりしている。いつも俺を見かける度天使のように微笑んでくれたのに、今は頬杖をついて、どこか上の空、心此処にあらずといった風だ。

「あ、花宮おはよ〜」

教室の入口から別のクラスの様子を覗き見る、それも男子の多い特進クラスとなると、流石に不審者。花宮は俺たちと知り合いだとも思われたくないのか、原の挨拶を華麗にスルーして教室の中に入って行った。

「そう言えば花宮、花園の隣の席だった……」

今の様子から見るに、花園は悲しんでいる、もしくは怒っている。俺にすら原因の分からない今、花宮は劇薬と同じようなものだ。火に油を注ぐとはまさにこの事。

花宮は花園の隣の自らの席に腰を掛けると、やはり見かけだけは優等生だけあるらしい、勉強を始めた。
はぁ、と花園がため息をつく音、花宮が鉛筆を走らせる音。


それらが混ざり合って、俺には歪な不協和音に聞こえた。

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漫画・声優・アニメ・ゲーム大好きリカント(夜李)(プロフ) - 面白いです!更新待ってます! (2020年10月20日 18時) (レス) id: 7e6458e2b5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 征羅さん» ありがとうございます。面白いと思っていただけるように意識してるので、そう言っていただけるのはとても嬉しいです。返信遅くなってしまってごめんなさい、これからもよろしくお願いします。 (2020年1月26日 19時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
征羅(プロフ) - すごく面白いです。毎回爆笑してます。あからさまに笑いを狙ってないような感じが好きです。今まで俺が見た小説とは違う面白さで、すっかりハマってしまいました!更新頑張ってください。 (2019年10月1日 0時) (レス) id: 44f8e3471a (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - みかんさん» ありがとうございます。受験生なので更新が遅くなってしまいますが、頑張りたいと思います。 (2019年9月23日 20時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 面白いですら楽しく読ませてもらってます。更新頑張ってください! (2019年8月20日 16時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずりは | 作成日時:2019年5月4日 15時

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