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「いやぁ、ほんま偶然やなぁ。花宮元気にしとったか〜?」
どうしてこうなったのか、本当に神様に問うてやりたい。
未だに原の注文を待っている俺の目の前には、もちろんのこと原、花宮、そして胡散臭い笑みを浮かべた、今吉さん、だったか。
どうやら花宮の中学時代の先輩らしいが、俺も苦手な部類だ。
彼は俺たちを見かけるとすぐさまこちらに向かってきて、花宮をサトリスマイルで再び席に着かせた後、原の隣に座った。どうやら原もあまり得意な部類ではないらしい、窓の方を向いて全力で他人のふりをしていた。
「それで、あの意中の女の子とはどうなったん?」
「胃中の女…?あぁ、確かにさっき食べたエビはメスだった」
今吉さんにとんでもないことを聞かれ、花宮はとんでもない方向に話を向けていた。流石に無理がある。しかしツッコミの伝道師と言われた(不本意)な俺でも、さすがにこの状況でツッコミを入れるわけにはいかまい。
「隣で他の男とデートしてるだなんて、俺、言えない…」と言葉とは裏腹に完全に口に出していた原にチョップを入れるだけにしておいた。
「忘れるなんて酷いな〜、花宮が珍しく悩んでると思うて、ワシがアドバイスしてあげたやん」
「うるせぇ、悩んでねえよ」
花宮が本当にやめろ、と言う顔をする。あの、お客様、お呼び出しボタンはストレス度数の数だけ押すものじゃないので本当にやめて下さい。
そんな花宮が面白いのか、今吉さんは楽しそうに口を開く。
「黒子くんみたいなタイプはモテる、って教えたから花宮いい子にしてると思ったんやけどなぁ」
その言葉によって、この空間は一度時が止まった。
いやー、アドバイス失敗やな、と今吉さんだけがしらじらしく水を飲んでいる。
……花宮の今までな不可解な行動、ここに全ての謎が解けてしまった。元凶は紛れもなくこの人だ、トップオブ性格悪い今吉さんだ。
「山崎くん〜?レジお願い!」
「は、はい!」
バイトの先輩から声が掛かって、俺は花宮たちの席からやっと離れることができた。花宮が急遽キャラ変を始めた理由も分かったので、あとアイツらに用はない。
あるとすれば、デートのお相手を前に皿の素材と構成要素を唱え始める花園くらいだろうか。文系とデートは向かないから辞めなさい、ちなみに原も文系だから関わるのはやめろと何回も言いいかせたはずなんだけどな……。
離れざまに、そっと後ろを振り返る。
アーメン、と心の中で原の冥福をただ祈った。
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漫画・声優・アニメ・ゲーム大好きリカント(夜李)(プロフ) - 面白いです!更新待ってます! (2020年10月20日 18時) (レス) id: 7e6458e2b5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 征羅さん» ありがとうございます。面白いと思っていただけるように意識してるので、そう言っていただけるのはとても嬉しいです。返信遅くなってしまってごめんなさい、これからもよろしくお願いします。 (2020年1月26日 19時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
征羅(プロフ) - すごく面白いです。毎回爆笑してます。あからさまに笑いを狙ってないような感じが好きです。今まで俺が見た小説とは違う面白さで、すっかりハマってしまいました!更新頑張ってください。 (2019年10月1日 0時) (レス) id: 44f8e3471a (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - みかんさん» ありがとうございます。受験生なので更新が遅くなってしまいますが、頑張りたいと思います。 (2019年9月23日 20時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 面白いですら楽しく読ませてもらってます。更新頑張ってください! (2019年8月20日 16時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆずりは | 作成日時:2019年5月4日 15時