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「……地獄か、ここ」
結論から言えば、俺は花宮、原を前にして膝を折ることしかできなかった。
外周20周追加とかどこぞの腹黒監督野郎が言うから、そうならざるを得なかったという方が正しいか。
そうして完成したのが、閻魔様もびっくりの地獄絵図だった。
花園と黒子が向かいあって座るすぐ手前には、原と花宮が座っている。ガラスの壁で隔てられて顔は見えないものの、少し聞き耳を立てれば声は聞こえてしまうだろう。
現に原はしっかりと耳を後ろに傾けていた。
「……ごめんね、ファミレスなんて」
花園はいつにも似合わないしおらしい態度で、下を向いた。しかしさすが花園と言ったところか、机に並ぶ料理の数が全然ごめんねって感じじゃない。
「いえ。気にしないでください。マジバより、ここのが静かで話しやすいですから」
黒子とやらが優しく微笑むと、花園は顔を真っ赤にして手で覆った。誰だあれ。
それを見ていた原は大爆笑し、一方の花宮は面白くなさそうに店員呼び出しベルを連打していた。あの、お客様。
「…ご、ご注文をお伺いします」
恐らく引きつっているであろう笑みを浮かべて、問題のお客様とも呼びたくない二人を見た。
原がわざとらしくうーん、どれにしようかな、と迷っている間にも、隣の席の会話は聞こえてきた。
「どうでしたか?僕は、犯人が最後の独白をして死んでしまったところが好きです」
「す、スキ…?私も、好きだよ…」
花園の声は、恥ずかしそうに小さく萎んでいく。照れてるところ悪いけど10割前のことじゃない。
俺は花園が全くの恋愛初心者だったことを思い出した。中学以前はよく知らないが、恋よりSF映画が好きな女だ。
「俺もそんなかわいい花園が好きだ…」
「ザキ、あれ10割ザキに向けられた言葉じゃない」
これだから童○は、と原はため息をつきながらメニューのページをめくる。うるせぇよその前髪切り倒してやろうか。
そんなことを思いながらちらりと花宮の方に目をやると、不満そうに頬杖をついて窓の外を見ていた。
「うげぇっ」
そんな花宮が、窓の外に何かとんでもないものを見つけたらしい。ひどく青ざめた顔で、そそくさと荷物を準備し始める。
「あれ、花宮もう帰るのか?」
そう俺が尋ねた時にはもう遅かったらしい、
「花宮やん、こんなところで会うなんて奇遇やなあ」
俺のすぐ後ろには、胡散臭い顔をした男が立っていた。
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漫画・声優・アニメ・ゲーム大好きリカント(夜李)(プロフ) - 面白いです!更新待ってます! (2020年10月20日 18時) (レス) id: 7e6458e2b5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 征羅さん» ありがとうございます。面白いと思っていただけるように意識してるので、そう言っていただけるのはとても嬉しいです。返信遅くなってしまってごめんなさい、これからもよろしくお願いします。 (2020年1月26日 19時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
征羅(プロフ) - すごく面白いです。毎回爆笑してます。あからさまに笑いを狙ってないような感じが好きです。今まで俺が見た小説とは違う面白さで、すっかりハマってしまいました!更新頑張ってください。 (2019年10月1日 0時) (レス) id: 44f8e3471a (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - みかんさん» ありがとうございます。受験生なので更新が遅くなってしまいますが、頑張りたいと思います。 (2019年9月23日 20時) (レス) id: 718a0c6063 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 面白いですら楽しく読ませてもらってます。更新頑張ってください! (2019年8月20日 16時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆずりは | 作成日時:2019年5月4日 15時