慰めの言葉２３ ページ29
緊迫した空気の中、ダージリンティーの香りが漂う。
香りを楽しむ代表的な紅茶だが、私にはそんな余裕はなかった。
「結局、エリスちゃんの世話人は見つからなかったよ。
…まぁ、見つからないだろうとは思っていたけれどね。」
「左様でございますか。」
「だから、私の方から新しい世話人を手配しておいた。
エリスちゃんには色々と文句を云われてしまったよ。」
慰めの言葉をかけるべきなのだろうが、戸惑ってしまう。
＿＿＿首領が微笑んでいらっしゃるからだ。
「文句を云われたにしては、表情が明るいですね。」
「そうかい？
＿＿＿＿上手くいったからかな。」
其の一言で、私は全てを悟った。
エリス嬢の世話人が失踪したのは、偶然の出来事ではない。
首領の手によって引き起こされた、必然的なものだったのだと。
首領は昔から、己の欲望の為なら手段を厭わない御方だ。
内臓が凍り付いていくような感覚に襲われた。
「今日の事は目を瞑るけれど、これから私の予定を狂わすような事をしないようにね。
私の大切なAに、メスを突き立てるなんて事はもうしたくはない。
今日はもう戻っても良い。
疲れた体はしっかりと休めるんだよ。」
「………失礼致します。」
＿＿＿＿＿＿
Aが扉を押し開けて、部屋を出てゆく。
結果的に策略は成功したが、今の気持ちは優れない。
「君の中で、私という存在は恐怖を具現化したようなものになっているのだろうね。」
私以外誰もいない部屋に、私の力ない声が響く。
Aへの気持ちは自分でも痛いほど判っている。
大事にしたいと思う程、Aに恐怖の感情を植え付けてしまう。
「ポートマフィアの首領として、今迄色々な局面で理論的最適解を出してきたが……君への想いの伝え方一つ判らないなんて情けないね、私は。」
ダージリンティーの香りを楽しむ気分には、如何してもなれなかった。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (4月25日 1時) (
レス) id: 388da595fc (このIDを非表示/違反報告)
巫子(プロフ) - とても面白いお話ですね！『やめないか。』が『やらないか。』に見えました！←どうでもいい (2018年1月3日 20時) (レス) id: 343e14107c (このIDを非表示/違反報告)
アメヲト - おおおっ！戻って下さり本当にうれしいです♪ (2017年2月14日 21時) (レス) id: dfeb66c68a (このIDを非表示/違反報告)
唯 - お久しぶりです！！ (2017年2月14日 17時) (レス) id: 80ca6023d8 (このIDを非表示/違反報告)
カヤ猫 - 面白かったです！今後森さんとどうなるかが気になります。更新頑張ってください。 (2017年2月12日 19時) (レス) id: 30c508f23e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚澤 | 作成日時：2017年1月12日 23時
