慰めの言葉２２ ページ28
私と中原様はその後色々な場所を捜しまわった。
敵のアジトや特殊部隊を尾行するなどして、尽くせる手は尽くしたが、世話人は見つからなかった。
私達はぼろぼろになった躰を引きずるようにして拠点へ戻った。
「エリス様には俺から報告しておく。
手前は着替えて首領室へ向かえ。」
「然し…」
「これ以上顔を見せないのは流石に不審がられちまう。
…ほら、行けよ。」
「…判りました。
失礼致します。」
中原様に深く礼をすると、急いで替えのスーツに着替えて首領室へ向かった。
時刻は夕陽の眩しい午後4時半。
今日は朝一度行ったきり顔を出していない。
首領は勘の鋭い御方な故、深くは追及されなくとも、さり気なく今日の事を聴かれる可能性は高い。
首領室の前に到着した途端、室内から入り給えと声がかかった。
意を決して扉を開く。
「失礼致します。」
「驚いたかい？
そろそろ来る頃かと思ってね。」
首領の顔色を窺う。
卑しく微笑むその御姿は、いつもと変わらぬように思えた。
「珈琲をお持ちしましょうか。」
「うーん…今日は紅茶がいいかな。
……その前にA、此方へ来てくれないかい？」
「…はい。」
私の低いヒールが鳴らす、カツカツという音が部屋に響く。
一歩、また一歩と首領に近づいてゆく。
首領は不動のまま私の到着を待ち構えておられる。
残り数メートルの距離まで近づいた時。
突如正面から風が吹き抜けたかと思うと、目の前に居る筈の首領が消えた。
代わりに感じる後ろからの只ならぬ殺気。
首元に触れる冷たい金属の感触。
全てが一瞬の出来事であった。
「A……君は昔から、一つの変わらない癖を持っている。」
真後ろから響く首領の低い声。
「今日は私に内緒で中原君と何処へ行っていたんだい？」
背中を冷や汗がつたう。
声が出ない。
呼吸が乱れる。
＿＿＿＿怖い。
その数秒後、首元の冷たい感触は消えた。
背後から首領が離れ、席へと戻られる。
「…すまないね。
さ、紅茶を淹れてくれるかい？」
「……はい。」
ポートマフィア首領・森鴎外。
私は彼を、知らぬ間に見くびっていたのかもしれない。
金属の触れていた部分に残るひんやりとした感覚を抑えながら、足早に給湯室へ向かった。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (4月25日 1時) (
レス) id: 388da595fc (このIDを非表示/違反報告)
巫子(プロフ) - とても面白いお話ですね！『やめないか。』が『やらないか。』に見えました！←どうでもいい (2018年1月3日 20時) (レス) id: 343e14107c (このIDを非表示/違反報告)
アメヲト - おおおっ！戻って下さり本当にうれしいです♪ (2017年2月14日 21時) (レス) id: dfeb66c68a (このIDを非表示/違反報告)
唯 - お久しぶりです！！ (2017年2月14日 17時) (レス) id: 80ca6023d8 (このIDを非表示/違反報告)
カヤ猫 - 面白かったです！今後森さんとどうなるかが気になります。更新頑張ってください。 (2017年2月12日 19時) (レス) id: 30c508f23e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚澤 | 作成日時：2017年1月12日 23時
