絶望の日々 ページ29
「天族が滅びた後、私は最高神の元に引き取られたわ。そこでは、私はただの実験体。子を成す為の道具だった」
「子を成す為の道具って……」
「簡単に言えば、私の力を宿した子を女神族の陣営に取り入れ、魔神族を叩き潰そうとしたのよ。だから、私は毎日のように女神族と体を重ねた」
「ひ……っ」
その場面を想像してしまったのだろう。菫の顔から血の気が引く。
「ごめんなさい。気持ち悪いわよね」
「ううん…私こそごめんね。つらいのはユーリの方なのに」
「お水、飲む？」
「うん……」
パチッと指を鳴らし、コップにお水を注ぐ。暫くすると、菫の顔色がだいぶ良くなった。
「ごめんね、ユーリ。話、続けて大丈夫だよ。あ…ユーリが嫌だったらもうしなくて大丈夫だから！無理しないで、ね？」
「ありがとう、菫。でも、大丈夫よ」
ふふ、と笑い、私は話を続ける。
「……好きでもない男と体を重ねるのは気持ち悪かった。何度嫌だと叫んでも終わらない地獄の日々。死んでしまいたかった。生きていたって何一つ良いことなんてなかったから。私が守りたいものは、全て失われてしまったから」
「死ななかったの……？」
「死ねなかったのよ。最高神に自死防止の魔法をかけられていたから。まぁ、私も唯一の抵抗として避妊魔法を自分にかけていたから子を成すことは不可能だったんだけど」
「そんな魔法があるの？」
「ええ。確実に避妊できる魔法があるのよ。……使う？」
じーっと菫の下腹部を見ると彼女は顔を真っ赤にする。
「使わないよ！！っていうか、どこ見てるの！！？」
「ごめんごめん。ちょっと遊びたくなっちゃったから」
菫にポカポカ叩かれ、痛い痛いと言いながら笑う。
「菫はもう月のものは始まっているのよね？」
「去年、盛大にお祝いしたじゃん」
「……そういえばそうだったわね」
この一年ほどで色々ありすぎてすっかり頭から抜け落ちていた。私、一回死んだし。
「で、話の続きは？」
「そうそう。それでね、もう嫌になって天界から逃げちゃったのよ」
「……それで？」
「暫く『聖なる森』で過ごして力を溜めて天界と魔界に殴り込みに行った」
「何やってるさ、このバカ女神！！」
菫の雷が落ちた。
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作者名：アストライアー | 作成日時：2023年5月24日 5時
