Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第八章〉 (ページ28)

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イデアール聖王国滅亡の真実ページ28

「はぁ……」

　夜の『精霊の森』に吹く風が、私の頬を優しく撫でる。四季がある『精霊の森』の季節は春。柔らかな風には少しだけ肌寒さを感じる冷たさを孕んでいる

"お前が国を滅ぼすような女王とは思えん。〈理想の女王〉と呼ばれるお前が我が王家に伝わる文献に書かれている通り、魔神王の手を取り、国を滅ぼしたとはどうにも思えんのだ,,

　昼間。国王陛下に告げられた言葉を思い出し、思わず深いため息をつく

　イデアール滅亡時。私は魔神側から提示された書類にサインし、取り引きをした。だが、その書類は燃やされ、なかったことにされた。そして、私の目の前で全て消えた。数多の生命が、魂諸共、消滅した

「＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿っ！！」

　気持ち悪い。頭がガンガン痛み、目眩が酷い。床に足がついているはずなのに、ふわふわしてよく分からない

　口元を押さえて備え付けのキッチンに走る。すぐ側に置いてあるサイドテーブルの引き出しから乱暴に薬を取り出し、急いで水と共に飲み込む

「ぅ……っ」

　胸元を押さえてズルズルと座り込む。目を瞑って吐き気をやり過ごしていると暫くしてようやく治った

「こんなに酷いの…久々……」

　気を失った方がずっと楽だと思うほどの発作。フラフラと床を這うように部屋に戻ると、壁に埋め込まれた全身鏡に映る自分を見て思わず嗤いが零れる

　緩く波打つ青みがかった白銀の髪。光彩を欠いた、金と蒼の双眸。顔色の悪さが整った顔立ちを更に際立たせている。人形、と言われた方がずっと納得できる。感情なんてとうの昔に捨ててきたはずなのに、痛みや苦しみは未だに感じるなんて笑い話にもならない

「ごめんなさい……」

　イデアールの滅亡は今でも私の心に根を張るトラウマの一つ。イデアールのことを考えると後悔ばかりが押し寄せ、自分の存在意義が見出せなくなる

「ごめ、なさ……っ」

　酷い発作が起きる時は、大体イデアールかメリオダス関連だ。誰かが傍にいてくれる時は心配をかけないように明るくしているおかげで気持ちが沈むことはあまりないが、一人きりの時に発作が起きると死の誘惑に負けそうになる

　そっと鍵付きの引き出しを開け、キラリと月明かりに照らされて妖しい光を放つダガーを取り出す

「…ごめんなさい」

　こういう行為が心配させている原因だということは分かっている。けれど、どうしても、やめられない