Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第八章〉 (ページ26)

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精霊界の時間の流れページ26

「ようやく静かになったな」

　王都の復興や王女教育が残っている王女様方が退室した部屋で陛下の声がやけに大きく響いた。因みにラファエルに呼ばれたとか何とかでフローラも部屋から消えた

「王女様といえども年頃の女の子ですもの。お喋りしたいお年頃ですよ」

　私も王女様方と同じ年頃は…って私の場合は特殊だから比較対象にならないわね。確か…お父様のお人形になっていたはずだもの

　何とも悲しい過去を思い出し、振り返るのをやめた。わざわざ地雷に足を踏み入れるのは、勇者ではなく馬鹿のやることである

「ユーリよ、マリーはどうなっておる？」

　少し不安そうに視線を彷徨わせる陛下を見て小さく笑みを浮かべた私はマリーさん…否、シェリルさんを思い浮かべる

「精霊界での日々は充実しているそうです。ただ、精霊界に滞在してまだ１ヶ月ほどですから精霊に癒されながら過去の傷を癒やしているところですね」

「１ヶ月？」

「精霊界は、人間界と時間の流れが違うのです。精霊界での１日は、人間界での１時間に相当します」

「一瞬で老いてしまいそうだな……」

「精霊には寿命というものがなく、従って老いることもありません。今の精霊界は"精霊の為の世界,,であって、他種族が移住することを予想していないものなので短命種である人間が精霊界に住むのは難しいかもしれません」

　旧イデアール聖王国があった旧精霊界は、メリルローズ様によって他種族も住めるような世界として造られた。故に他種族も移住できるような世界だったのだが今は他種族との交流も殆どない為、精霊の為の世界として私が造り直したのだ。イデアールに住まう全ての生命が消えたあの日、感情の昂りと共に魔力を暴走させた私によって精霊界は滅びた。精霊界を滅ぼしてしまった手前、新たに精霊界を造り直すのは道理に適っていると言えるだろう

「…ユーリ、一つ聞いても良いか？」

「……お答えできるものであれば」

　本来ならば、王族に対して予防線を張るのは無礼極まりない。が、ここは公式の場ではなく私的な茶会。最低限の礼儀を欠くつもりはないが、公式の場ほど礼節を弁える必要もない

　予防線を張った私に気を悪くする素振りも見せず、陛下は深く息を吐いて私を真っ直ぐ見た

「お前は、本当にイデアール聖王国を滅ぼしたのか？」