32松 ページ34
「松野さん、どうかしました?」
「……ナンデモナイッス」
そんな純粋な目で俺を見ないでください。
白猫をバスタオルにしっかり繰るんで早々に脱衣室を後にしようと立ち上がる。
その時またさりげなく彼女の様子を伺うと、白猫に引っ掻かれたのか両腕に痛々しい傷がいくつも出来上がっていた。
そこそこ深い傷もあるようで血が垂れている。多分相当痛い。いや確実に痛い。実体験が山ほどあるから自信を持って断言できる。
「……あのさ、救急箱ってある?」
自然と彼女に話しかけてた。
多分違和感なく話し掛けられたと思う。
「え?ありますけど…どこか怪我でも?」
「いや怪我してるのアンタだから、それ手当しないとでしょ」
血が垂れている腕を指させば、さも今気が付いたみたいな顔で彼女はあー…と声を漏らした。
どうも彼女は自分に対して鈍感というか無関心な部分がある。
「これくらい――」
「――舐めとけば治る…とか言うんでしょ。猫の引っ掻き舐めない方がいいよ、化膿するかもしれないし」
「……、じゃあお風呂上がってから手当てするので出しておいてもらえますか?居間に入ってすぐの引出しの中にあるので」
「俺が手当てする」
これ以上ないかってくらい目を見開かれた。
そんなに以外だろうか…。まぁ今まであんな態度だったから当然っちゃあ当然か。
手当ての最中に何気無い会話をしながら今までの態度を謝ろうと思った。それにこの機会を逃したらタイミングが分からなくなるから、正直いい機会だと思った。
「…で、でもお手数ですので」
「アンタ気付いてないみたいだけど、背中とか自分じゃ届かない位置にも傷出来てんだよ?どうやって手当てすんの」
「ぅ…、でも…」
「それともなに?俺の治療じゃ不安ってか?」
「え」
「手当した後に治療費取られるとか思ってる?それとももっと傷抉られるかもとか?あ、それか手当に乗じていやらしい事されるかもとか思ってんの?まぁ無理もないよねなんせ町中歩いてたら何もしてないのに職質されるくらい不審者っぽい顔してるから不安に思うのは当たり前だk――」
「――ちょちょ松野さん私そんなこと微塵も思ってませんよ!?」
「………ただより安いものは無いんでしょ」
「!」
「じゃ、準備しとくから」
そう言い残して今度こそ脱衣室を後にした。
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渚(プロフ) - 月花さん» 月花さんコメントありがとうございます!この時のイラストはazpainter2を使用して1から描いていました。今はクラスタを使っています。 (2020年2月3日 19時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 前もこの小説を読ませていただきました。でも松沼にハマっているのでまた読ませていただきます。 絵上手いですね、どうやって描いてるんですか? (2020年2月3日 17時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆっこ - 投稿頑張ってください!! (2019年8月31日 18時) (レス) id: c52c09b210 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆっこ - 一気に見ちゃいました!大体3時間位かな? (2019年8月31日 18時) (レス) id: c52c09b210 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ふゆっこさん» ふゆっこさんコメントありがとうございます!天才だなんて恐れ多い…、でもとても嬉しいです、閲覧ありがとうございます! (2019年8月31日 17時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2016年2月15日 17時