11松 ページ13
「松野さん」
「!」
声を掛けられて、自然と体が強張った。
「間違っていたらごめんなさい。松野さん、帰る所が無いんですよね?」
「…っ」
彼女のその言葉に、自分が倒れた理由を思い出した。
そしてまた気分が悪くなる。
「……なんでそう思ったの?」
「勝手ですけど、スマホの履歴を見させていただきました。後はあなたの様子を見てなんとなくそう予想したんです。…どうですか、合ってます?」
履歴見たのかよって内心イラッとしたけど、俺だって彼女のスマホを勝手に使った訳だから何も言えない。
そして彼女の言っている事は間違ってなくて…、だけどそれを認めたくない自分がいて、口からは乾いた息しか出てこない。それが無言の肯定を示してしまった。
「……松野さn――」
「――だったら何だっていうの…」
自分で思ってたよりも、低く押し殺した声が出た。
「それ知ったところでアンタには関係無いでしょ」
助けてもらっておいてよくそんな口聞けるなって、自分でも思う。
だけどこのやり場のない怒りの様な感情をどこかにぶつけないと気がすまなかった。
そんなの八つ当たりだって、自分でも分かってるんだ…。
女は一瞬たじろいだ様に見えたけど、またすぐ姿勢を正して俺の目を見て言った。
「いえ、さっきも言った通り、私は助けてと言われたから、出来る限り力になりたいと思っているんです」
……出来る限り?
…本当にそんな事思ってるの?
「じゃあ言うけど…」
「はい」
「……ここは…、俺の知ってる世界じゃないんだよね…」
この時、俺自身どんな風に彼女にそれを伝えたのか、話し終えた時には分からなくなっていた。まるで俺じゃない俺が勝手に話しているような感じだった。
異世界からやってきた、なんて体験を俺は今話している訳だけど、普通ならそんな夢物語信じる訳がない。
きっと頭がイかれてる奴だって思われるだけ。
だからこそ敢えて俺は自分に起こった出来事をありのまま話した。
話し終えた時この女がまた善人っぽいことを言ったとしても、こっちにはエスパーニャンコがいる。
こいつが女の心を読んだら、それを口実に出ていけばいい。
裏がある人間に世話になるくらいなら、一人でいる方がずっと楽だ。
だけど、そんな考えは女の次の一言で覆された。
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渚(プロフ) - 月花さん» 月花さんコメントありがとうございます!この時のイラストはazpainter2を使用して1から描いていました。今はクラスタを使っています。 (2020年2月3日 19時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 前もこの小説を読ませていただきました。でも松沼にハマっているのでまた読ませていただきます。 絵上手いですね、どうやって描いてるんですか? (2020年2月3日 17時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆっこ - 投稿頑張ってください!! (2019年8月31日 18時) (レス) id: c52c09b210 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆっこ - 一気に見ちゃいました!大体3時間位かな? (2019年8月31日 18時) (レス) id: c52c09b210 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ふゆっこさん» ふゆっこさんコメントありがとうございます!天才だなんて恐れ多い…、でもとても嬉しいです、閲覧ありがとうございます! (2019年8月31日 17時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2016年2月15日 17時