10松 ページ12
――――――――…
―――――…
「―――っ」
「松野さん」
「…。」
「大丈夫ですか?目ぇ腫れちゃってるのでこれで冷やしますね」
じっとしてて下さいね、と言って彼女は冷やされたタオルで俺の目元を拭ってきた。
あれから俺はまた意識を飛ばしたらしく、部屋は夕日の光に包まれていた。
…だいぶ眠っちゃってたんだ…俺…。
「落ち着きましたか?」
「…うん…、ごめん…」
「いえ、私は大丈夫ですから。それより松野さん、また少し熱が上がってしまったみたいなので安静にしてて下さいね?」
「………」
あぁ、やってしまった…。目の前で正気を失って気絶するとか…。
また彼女に醜態を晒してしまった。
だけど彼女は気にしていないのか、心配そうな顔をしながら割れ物を扱うように俺の目元を撫でている。
…俺には勿体ない…、優しい手付きだ…。
「……アンタさぁ」
「はい?」
「…どういうつもりなの」
彼女にとって俺は、身元不明の怪しい遭難者でしかないはずだ。
なのになんでここまで手厚く扱ってくれるのか、単純に疑問が湧いた。
普通だったらさっさと警察やら何やらに丸投げして、面倒ごとを避けるのが当たり前だと思う。
彼女は質問の意味を理解していないのか首を傾げてきた。
とぼけてるつもりなのだろうかと思いながら、どうしてここまでしてくれるのか、と質問を変えてまた尋ねると、彼女はあぁ、と納得してからあっけらかんとした顔で答えを返してきた。
「松野さんが助けてって言ったから助けたんです」
「は?」
聞いた瞬間、こいつ何言ってんだって思った。
いつ俺がそんな事言った?
今日初めて会った女にそんな事を言った覚えなんて無い。
なんて思っていると、俺の考えている事が解ったのか彼女は言葉を続けた。
「昨日あなたを見つけた時、猫ちゃんがあなたの心の言葉を代弁してくれたんですよ」
「…」
言われて納得。
そんで内心舌打ちをした。
こいつまた余計なことを…、と布団に乗っかって欠伸をしているニャンコを睨むけど、それと同時に、俺そんな事思ってたの?という自分への苛立ちと動揺と…、二つの感情が混ざり合ってどう言葉を返していいのか分からなくなった。
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渚(プロフ) - 月花さん» 月花さんコメントありがとうございます!この時のイラストはazpainter2を使用して1から描いていました。今はクラスタを使っています。 (2020年2月3日 19時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 前もこの小説を読ませていただきました。でも松沼にハマっているのでまた読ませていただきます。 絵上手いですね、どうやって描いてるんですか? (2020年2月3日 17時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆっこ - 投稿頑張ってください!! (2019年8月31日 18時) (レス) id: c52c09b210 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆっこ - 一気に見ちゃいました!大体3時間位かな? (2019年8月31日 18時) (レス) id: c52c09b210 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ふゆっこさん» ふゆっこさんコメントありがとうございます!天才だなんて恐れ多い…、でもとても嬉しいです、閲覧ありがとうございます! (2019年8月31日 17時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2016年2月15日 17時