129松 ページ38
「………大丈夫だったの?……その…身籠ったりとか…」
「……一応避妊具は着けてくれてましたから大事にはなっていないです。……でもあれ以来、男性とのお付き合いについてどう向き合っていけばいいのか分からなくなっちゃって…」
自嘲気味に笑う姿は、見ているだけで胸が締め付けられる。
確かにこれは、言いたくても言えない。相手を想っているなら尚更。
俺は女じゃないから完全に気持ちを理解する事は出来ないけど、下手をすれば距離を置かれるか、受け入れてもらえないかもしれないという恐怖がまとわりつくのは分かる。
その恐怖を承知の上でこうして打ち明けてくれた事に嬉しいと思う感情はある。だけどそれ以上に、悲しい気持ちと労いたい気持ちが同時に溢れ出てくる。
だけど、どう言葉を掛けていいのか分からない。相手が求めているものをちゃんと返す事が出来ない、いつもの俺の悪い所だ。
辛い事を打ち明けてくれた事に対する感謝か?労いの言葉か?どれも違う気がする。
――だから俺は、行動で示す事にした。
「ごめんなさい…、折角お祭り楽しんでたのにこんな空気にしちゃって…。付き合いづらいでしょ?こんな事知ったら――」
言葉を遮る様に、そっと割れ物を扱うように小さな身体を抱き寄せる。震えていて、とても弱々しい。
Aは俺の行動に困惑しているのか固く硬直してしまい、密着している所から心臓の音が激しく伝わってきた。俺だけじゃなくて良かったとちょっと安心した。
「…こういう時に気の利いた事を言えたらって思うけど、俺そういうのあんま得意じゃないから…。だから、俺の中にある確実な言葉だけ言うから」
しっかりこの気持ちが伝わる様にぎゅっと小さな身体を抱き締める。身体中どこもかしこも熱くなり汗が止まらない。
――本日二度目の、一世一代の告白。
「話してくれてありがとう。俺やっぱお前のこと好きだよ。優しくて、思いやりがあって、ちょっと子どもっぽい所もあって、俺なんかの事もちゃんと想ってくれてて、……だから今の話を聞いて、もっと守りたいって思った」
肩に雫が落ちるのを感じる。
抱き寄せてるから見えないけど、多分これが、Aが最後に押し止めていたもの…。
「A、俺にお前を守らせて」
――ドォーン!!
俺の背後で、一発の花火が打ち上がった。
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渚(プロフ) - ことみさん» ことみさんコメントありがとうございます!イラストをお褒めいただき嬉しいです。これからも励んでいきます!応援ありがとうございます! (2019年7月27日 22時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - 絵が上手過ぎて脱糞する。。。 更新、頑張ってください!一気読みしてきました♪タイトル見た瞬間あ、これ、神作品やわ。って思ってw応援してます! (2019年7月27日 5時) (レス) id: 58ea8aaecc (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - シヴァさん» シヴァさんコメントありがとうございます!イラストを誉めていただけると本当に嬉しいです!まさに生きる糧になります! (2019年7月5日 17時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
シヴァ - 絵がすっごく上手くてビックリしました!!絵があると想像しやすくてとっても面白いです!! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 39ad7af53b (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 三月の糸姫さんコメントありがとうございます!イラストたまにしか載せられませんけど、お褒めいただいてとても励みになります!これからも更新頑張っていきます! (2019年5月9日 0時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2019年1月14日 22時