128松 ページ37
「……なんだかドラマのワンシーンみたいですね」
「茶化さない」
「……………今は好きって言ってくれてますけど、私の全部を知ったら気が変わるかもしれない…。その不安がある限り気持ちを伝えるのは怖くて無理です…」
「……A」
「だって私、本当に一松さんが思ってる程いい女じゃないんですよ?」
膝の上に置いてある両手は固く浴衣を握り締め、震えている。
「一松さんが来る前は料理とかあんまりしませんでしたし、もっとガサツな生活をしてたんですよ?」
「一人暮らしならありがちでしょ?俺なんか両親がいてもガサツな生活送ってたし」
「一松さんが来てからは見栄張って家庭的な所を見せてただけですし」
「あの家事力は普段からこなしてないと身に付かないものだと思うけど」
「……それに、こんな見た目だから…デ、デートとかも街中だと目立ちますし」
……これは…、話してくれているのか…?
無理に言わなくていいとは言ったけど、俺の気持ちに対する答えを告げるには、どうしてもAはこれは乗り越えて行きたいらしい。
…………なら、俺もとことん付き合ってやろう。
「忘れたの?俺等兄弟は産まれた時から目立ってたんだよ?なんせ六つ子なんでね。だから目立つのは慣れてる」
「……それに私、…色々と重たい女ですし……」
「知ってる。それも引っ括めて…俺はAが好きなんだよ」
「………処女じゃないですし…」
「だからそ―――」
―――言葉が止まった。
思わず聞き流してしまうのではないかってくらいの調子で、その言葉は告げられた。
Aの呼吸が僅かに乱れている。
俺自身も思わず固まってしまい、Aの言葉の意味を理解した瞬間に、嫌な汗が背中を伝った。
「………………前に誰かと付き合ってた…?」
「………………………いいえ…、今までそんな余裕ありませんでしたから……」
「………………じゃあ………、それって………」
「……………………記憶は曖昧なんです…。でも、気づいたら全部終わってて……、周りの状況を見てなんとなく分かって……、父は泣いて謝ってました……」
自分達の周りの空気だけが下がったような感覚に見回れる。
祭りの喧騒が遠く聞こえる。
………これが、Aが一番に聞かれたくなかった事…。普通に生きる事を諦めざるを得なかった最大の理由…。
「……ははっ、だから言ったじゃないですか。色々と重たい女だって…」
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渚(プロフ) - ことみさん» ことみさんコメントありがとうございます!イラストをお褒めいただき嬉しいです。これからも励んでいきます!応援ありがとうございます! (2019年7月27日 22時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - 絵が上手過ぎて脱糞する。。。 更新、頑張ってください!一気読みしてきました♪タイトル見た瞬間あ、これ、神作品やわ。って思ってw応援してます! (2019年7月27日 5時) (レス) id: 58ea8aaecc (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - シヴァさん» シヴァさんコメントありがとうございます!イラストを誉めていただけると本当に嬉しいです!まさに生きる糧になります! (2019年7月5日 17時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
シヴァ - 絵がすっごく上手くてビックリしました!!絵があると想像しやすくてとっても面白いです!! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 39ad7af53b (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 三月の糸姫さんコメントありがとうございます!イラストたまにしか載せられませんけど、お褒めいただいてとても励みになります!これからも更新頑張っていきます! (2019年5月9日 0時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2019年1月14日 22時