93松 ページ2
《でも一松。梅宮さんが引っ越しちゃうとしても、梅宮さんの傍に居られない理由にはならないんじゃないの?一緒に町に出ても満月の日にだけ池に行ければいいんだから。多少通う場所が遠くなるだけで…》
「この世界に俺の国籍は無い。一緒に行くとしたら引っ越し手続きの書類の時とか、警察に頼った時に俺の事を聞かれたらもっと面倒事になる」
《じゃあ一松だけこの家に残るのは?土地は売らないんだろ?》
「それじゃあいざって時にAを助けられない。あの親父がまたAの居場所を特定しないとは限らない。ここから町まで結構距離あるし…」
《…もし次の満月の時も天気が悪かったらどうするの?》
「その時は自分だけ此処を離れるって…」
《…どっちにしろ時間の問題か》
…本当にこのままでいいのか…。
……もう何も出来ないのか…。
Aの肉親はいない、Aを気に掛けている近所爺さん婆さん達も、もしAが此処を離れたら疎遠になってしまう。そうなったら、あいつの周りには誰もいなくなる。本当に一人になってしまう。
それに、Aの容姿の事もあるから町の住人達と馴染めるかも不安だ。Aは人がいいから変な虫に目を付けられる可能性だってあるかもしれない。
「不安しかない…」
《じゃあさー、もういっそのことAちゃんをこっちに連れてきちゃったら?》
間の抜けた声に今まで膝に埋めていた顔を上げた。
発せられたのは長男のもので、ざわついていた他の兄弟もその声に耳を傾ける。
《こっちに来ちゃえばもうその親父に付きまとわれる事もないし、働きたいなら仕事もこっちで探せばいいじゃん。国籍とか小難しい問題だってどうにか出来るでしょ。俺達には情報詳細のプロ、ミスターフラッグっつー心強い金づ…友達がいるんだからさ。身内がいないなら反対する人だっていないだろうし》
《今、金づるって言おうとしただろお前。でも確かにおそ松兄さんの意見は一理あるかも》
《これなら問題解けツーシームッ!!》
《うん、普通にいい案だと思う。二十数年過ごして初めてナイスな意見を聞いたかも》
《へへ、褒めるな褒めるな》
《今のは褒め言葉なのか?》
「………いや…、でもそれを決めるのはAでしょ」
盛り上がってるとこ悪いけど、Aの事だから迷惑掛けられないからとかの理由で拒否られると思う。説得するとしても一筋縄ではいかない筈だ。
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渚(プロフ) - ことみさん» ことみさんコメントありがとうございます!イラストをお褒めいただき嬉しいです。これからも励んでいきます!応援ありがとうございます! (2019年7月27日 22時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - 絵が上手過ぎて脱糞する。。。 更新、頑張ってください!一気読みしてきました♪タイトル見た瞬間あ、これ、神作品やわ。って思ってw応援してます! (2019年7月27日 5時) (レス) id: 58ea8aaecc (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - シヴァさん» シヴァさんコメントありがとうございます!イラストを誉めていただけると本当に嬉しいです!まさに生きる糧になります! (2019年7月5日 17時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
シヴァ - 絵がすっごく上手くてビックリしました!!絵があると想像しやすくてとっても面白いです!! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 39ad7af53b (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 三月の糸姫さんコメントありがとうございます!イラストたまにしか載せられませんけど、お褒めいただいてとても励みになります!これからも更新頑張っていきます! (2019年5月9日 0時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2019年1月14日 22時