57松 夢主side ページ27
夢主side
満月の日から一夜明け、今はうららかな昼下がり。
縁側に座ってボーっと空を眺めている私は、一松さんが帰らない選択をしたことにまだ戸惑いを隠せず、あれから一松さんと一度も会話できずにいた。
当の一松さんは、向こうの世界に手紙を送る為に池に行っていて、今家には私と猫ちゃんだけがいる。
……なんで一松さんはこの世界に留まったのだろうか…。
ずっとそれが気になってしょうがない。
昨夜の空に浮かんでいた青白く輝いていた光は蛍のそれじゃない。間違いなく満月だった。
なのに蛍の光だと言い張って、帰らない選択をした一松さん。
あんなに憔悴しきるほどだったから、よっぽど帰りたいんだと思っていたのに…。
……もしかして…、昨夜の猫ちゃんとの会話を聞かれた?
一人は寂しいなんて言葉を聞いたから、だから帰らない選択をした?
まさか…そんな事って…。
「(……もしそうだとしたら…、私……)」
「A?」
「ヒェッ!?い、一松さんいつの間に」
「え、ただいまって言ったけど?」
考え事をしていたせいか、それとも一松さんの声が小さかったから気付かなかったのかは分からないけど…。
でも気配も無しに背後に立つのはほんとにやめてほしい。心臓が跳ねた。
一松さんは私の横に座って、そしてその膝に真っ先に猫ちゃんが駆け寄って座った。もう丸くなってお昼寝を始めてしまってる。
……あれ?そういえば一松さん、カプセル持ってない。
「一松さん、カプセルはどうしたんですか?」
「あぁ。もう必要無いから向こうに返した」
「…え、必要無いって…?」
「代わりにこれが送られてきたから」
と言って一松さんがズボンのポケットから取り出したのは、スマホだった。
「これと一緒にメモも入っててさ、電話しろって書いてあった」
「じゃあもうお電話したんですか?」
「ううん、これから」
一松さんはスマホを少し操作してから耳に当てた。微かにコールが漏れ聞こえ、数回なったあと誰かの声が聞こえてきた。
「…もしもし、俺、一松」
数秒の後、ガシャンとかバコンとか、離れてても聞こえるくらいの大きな音がした。え、なに?向こうで一体何が…?
一松さんもスマホを耳から離して顔をしかめてる。
そしてスマホから聞こえてきたのは…
《一松兄さん!!お久しぶりッス!!》
という元気ハツラツな男性の声だった。
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渚(プロフ) - 妹系長女さん» 妹系長女さんコメントありがとうございます!ブリッチしてしまう程楽しんでいただけるとは光栄です!パート1の方にもコメントして下さりありがとうございました!励みになります! (2019年7月3日 12時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
妹系長女 - え、やっぱりこの小説マジで神ってるよね!そうだよね!だってこの小説読んでるとつい、ブリッチしてしまうんですもの...w (2019年7月2日 20時) (レス) id: 2d0849d162 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ゆっくりでいいささん» ゆっくりでいいささん、コメントありがとうございます!私も個人的にこのイラストが一番気に入っています! (2018年12月16日 19時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりでいいさ - 65話の一松の顔で大草原だったわ (2018年12月16日 16時) (レス) id: f5def87010 (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - いつもイラストと一緒にお話も楽しみにしています!どっちも可愛いですね。一松のゲス顔もなんとも…。小話のリクエストで、スイカ割りとかスイカのお話みたいです(説明下手でごめんなさい)よろしくお願いします! (2018年1月10日 21時) (レス) id: 4940cabbbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2016年6月6日 21時