５２松 ページ22
澄んだ声が聞こえた。
その一言だけで、動き出そうとしていた俺の体はピタリと止まった。
「やっと家に帰れるんだよ。その為にはここに来ないといけないんだから、来ないでほしいとか言っちゃ駄目」
『帰っちゃったら、もう会えなくなる』
「…そうだね。でもそれは最初から猫ちゃんも分かってたでしょ？私も覚悟してた」
『けど、こんなに辛いとは思わなかった』
「…そっか…、でも割り切らないとだよ」
『また一人ぼっちの生活に戻っちゃう』
「猫ちゃんには一松さんがいるから、一人ぼっちにはならないよ。だから大丈夫」
『怖い』
「池に入るのが？…そっか、猫って水が苦手なんだっけ」
微笑みながらニャンコと話すA。
でもその顔は無理矢理作っているものにしか見えない。
だって、Aはニャンコの言葉が心を読んでいるものである事を理解している。
なのにあんな…、まるでニャンコ本人と会話をしてるみたいに話したりして…。
まるで、今までの言葉を自分の本心だと認めたくないみたいに…。
『ずっと一緒にいたい』
「一松さんとはずっと一緒にいられるって」
『羨ましい』
「…羨ましいって…なにが？」
『一緒にいられるのが』
「……だから猫ちゃんは」
『自分は一緒にいられない』
「………」
『また一人になっちゃう』
「……一人は慣れてるよ」
『慣れたくない。戻りたくない。今のままがいい』
「……わがまま」
『分かってる。それでもいたい』
「…無理だって分かってるくせに」
Aの表情が今にも泣き出しそうに歪んでいって、胸が締め付けられる。
だけどそれと同時に、Aとニャンコの言葉一つ一つが、俺の中のドス黒いものを照らしていった。
心なしか視界も明るくなったような気がする…。
「(………あれ…？)」
違う、気がするじゃない、実際に小さい何かの灯りが目の前を通り過ぎた。
緑色の光を放つ、小さい何か。
「(…あ、…蛍だ…)」
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渚(プロフ) - 妹系長女さん» 妹系長女さんコメントありがとうございます！ブリッチしてしまう程楽しんでいただけるとは光栄です！パート1の方にもコメントして下さりありがとうございました！励みになります！ (2019年7月3日 12時) (
レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
妹系長女 - え、やっぱりこの小説マジで神ってるよね！そうだよね！だってこの小説読んでるとつい、ブリッチしてしまうんですもの...w (2019年7月2日 20時) (レス) id: 2d0849d162 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ゆっくりでいいささん» ゆっくりでいいささん、コメントありがとうございます！私も個人的にこのイラストが一番気に入っています！ (2018年12月16日 19時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりでいいさ - ６５話の一松の顔で大草原だったわ (2018年12月16日 16時) (レス) id: f5def87010 (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - いつもイラストと一緒にお話も楽しみにしています！どっちも可愛いですね。一松のゲス顔もなんとも…。小話のリクエストで、スイカ割りとかスイカのお話みたいです（説明下手でごめんなさい）よろしくお願いします！ (2018年1月10日 21時) (レス) id: 4940cabbbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：渚 | 作成日時：2016年6月6日 21時
