【あんスタ】ただの用務員ですが。なにか？ (ページ14)

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63.簡単じゃないページ14

『お話しいいですか、椚先生？』

「おやAさん、どうしました？」

『いやいやいや、おかしいだろ』

職員室、椚先生の机に周りをはばからず詰め寄り問い詰める。

え、なにそのおとぼけ顔！！忘れたなんて絶対言わせねぇよ！？

『天祥院くんっつーか、fineのメンツ達に何を吹き込んだんですか！？』

「吹き込んだ、とは言い方が悪いですね」

『そんな事どうでもいいから！』

「･･･場所、変えましょうか」

ここじゃ迷惑です、と少し周りに視線を配りながらそう言って歩き出す椚さんの後を渋々着いていく。

まだ、前にあったSwitchのライブの件の方が良かった。さすがにここまでくると俺だって怒る。

「この辺ならいいでしょう」

『先輩、詳しくいいですか』

なるべく有無を言わせないように敢えて疑問符なく問い掛ける。

「･･･今回のS1はほぼ全ユニットが出演するらしく、司会進行に手が回らないのでやって欲しいと生徒会から話が回ってきて」

『じゃあ先生がやればいいじゃないですか』

「それが出来ないから貴方に話を回したんですよ」

『･･･陣先生』

「あの人も私用です」

不本意ながらぶすっと口を尖らし、そっぽを向く。

何となく事情は分かったよ。先生が忙しいからやって欲しいってのも分かった。ちゃんと仕事はする人だし。
･･･けどなぁ。

「前々から思ってはいたのですが、どうしてそんなにステージに上がらないと頑ななんですか？」

『･･･そんな簡単じゃねぇんだよ』

「はい？」

『････上がらないんじゃなくて、上がれないんすよ』

ボソッと零したその言葉は運良く拾われず、先生は不思議そうに頭を傾げるだけだった。

『とにかく！
俺は嫌ですよ、そういう進行とか向いてないし』

「･･･分かりました、私から生徒達には伝えておきます」

そう言って踵を返した先生に一礼して、俺も仕事に戻った。