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それから、数ヶ月。
何とか生活を続けることが出来た。しかし、彼女の記憶は一向に戻らないまま。ごめんね、と何度も謝ることしか出来ない自分に腹が立ち、幾度となく消えてしまいたいと思った。もう、何に苦しんでるのか本当に分からない。何に苦しんでるのか、分からない苦しみに苦しまされている。何が何だか分からない状態。
突然、名前を呼ばれた。
明星のことを呼んだのは、氷鷹。何故か勢いよく手を引かれそのまま連れていかれる。彼の顔は、絶望に満ちていて焦りを含んでいてた。珍しいこともあるのだなと、感じた。
何だか、今日は「音」が無いような気がする。聞きたくないだけで、自分から聞かないようにしているだけなのかもしれない。「ホッケーどうしたの?」と問いかけても「あとで、時期にわかる」と言われ、返す言葉もなくただ手を引かれ走るだけ。
突然、「音」が蘇った。
しかし、辺りはしんと静まり返っている。がらりと開かれた扉の先に、いたのは一人の女の子。知らない女の子の病室になんかに、連れてこられて意味がわからないと明星は、頭を悩ませた。
「彼女は、お亡くなりになられました」
刹那、彼の体に無数の刃が刺さるような痛みに襲われた。重い石の下に下敷きにされているような、痛みも感じる。痛い、痛い、心が痛い。
「えっ、A……?」
目の前のベットで寝ているのは、Aだ。
ずっとずっと、忘れていた大好きな人の名前。蘇る記憶は、どれも鮮明で昨日の事のように全てが、走馬灯のように駆け巡る。何で、今更。今更、彼女のことを思い出しても遅いのだ。彼女もう、この世にいないのに。
「おい、明星…」
「どうしよ、う…ホッケー…」
溢れてくる涙は、何度目だろう。彼女のことで頬を濡らすのは、もう止めようと決意したはずなのに、止まらない想いを一体どこへ向ければいいのだ。
そして、彼は思い出した。
数カ月前、この病気を発症したときに逆先に言われた言葉を。有り得ない、と思っていたがどうやらこれが真実なのである。
夢であって欲しいと願ったものは、全て現実で襲い来る後悔は、それを物語る。
『治療法は想いの人が死ぬこと、彼女が亡くなることだネ』
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ぐーたら - 感動しました。私はこういう話に弱いので泣きました。(しかも推しがスバル君…。) (2018年4月26日 3時) (レス) id: e7a3f1659e (このIDを非表示/違反報告)
ちょこしゅー。(プロフ) - 最高でした……(号泣)私の語彙力無くて伝わらないけど、とにかく最高です……まこちゃん天才や……… (2017年11月6日 14時) (レス) id: feb78ac8da (このIDを非表示/違反報告)
ままこ(プロフ) - ほたるさん» コメントありがとうございます!泣きそうって言ってもらえると嬉しいです;;; (2017年11月5日 20時) (レス) id: dd2edfbc4c (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 普通に泣きそうになった・・・そんな病気になりたくないな・・悲しい話だったけどとてもよかったです! (2017年11月5日 19時) (レス) id: 836cda0430 (このIDを非表示/違反報告)
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