特別な私の皇帝2【野坂悠馬】

一星の異変 ページ38

隕石が一星に落ちたことで会場中が静かになる。角馬さんも何も言えない。



私は一星のところに行こうとしたけど、足が動かない、いや動かせなかった。目の前で起こったことを信じたくなくて…。



そこで前半終了の合図が鳴り、角馬さんはあわてて実況し、一星のことを受け止めないようにした。





ベンチに戻ると、一星の呼吸は荒く、つくしさんがタオルを当てようとしても受け付けない。



「俺はただ、サッカーがしたかっただけなのに…」



それは今までで一番苦痛な表情。



しばらく沈黙が続いたけど、野坂がそれを破った。



今日の試合で、一星は誰も傷つけてないってことを言うと、風丸さんと士郎さんが。



「二人には演技をしてもらったんだ」



「主演男優賞並の演技力だっただろ？」



そういえば、野坂が監督とおでん食べてたな。西蔭がつゆをかけて。



「それと、僕の頭が弱いのも嘘だよ」



『えっ、それほんと！？』



「ああ。あれは一星くんのための嘘」



めっちゃ心配して損したわ…。



「お前、弟の手術代払うためにオリオンに従ってんだよな？
親父に頼んで貸してやるよ」



ヒロトがすごいこと言い出した。手術代って結構高そうだけど、さすが吉良財閥。



「でも…」



「お前、今のサッカービジネスを知らねーのか？」



ヒロトとタツヤの話だと、優勝すればお金がもらえるらしいから、それで手術代を払おう、っていうの。



「ヒロトくん、本当にその必要はあるのかな？
一星くんは誰のためにしているの？」



「弟だろ？」



野坂の言いたいことが分からない。



そこで監督が鬼道さんと連絡を取って調査したことを報告した。



それによると、弟の光は一日中病院に戻らなかったらしい。



「そんなはずは…光は今も、あの病院に…」



言ったとたん、一星は苦しみ出した。



「一星！」



稲森が駆け寄った数秒後、一星は急変した。



「ここはどこ…？怖いよ、兄ちゃん…！」



「大丈夫だ光、兄ちゃんが…」



一星は、一人で会話をしてるようだった。

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