212羽 ページ20
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「あ、山口」
「はい?」
「白石が呼んでるっぽい。」
縁下に言われて、山口はベンチから手招きをするAに気づいた。そうしてあわてて駆け寄ってみれば、Aはにやりと怪しい笑みを浮かべる。
「ピンチサーバー、いくよ。失敗したっていい、結果的に点にならなくたっていい。ただいつも通り、リラックスしてね。」
「う、うん!」
腕をぽんとたたかれて山口は肩を跳ねさせた。「言ってるそばから。」とAに笑われて、極力リラックスするよう深呼吸をしながらベンチに座る。その表情には緊張はもちろんだけれど、確かなピンチサーバーとしての強い意志がこもっていた。
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ローテーションシテ日向のサーブになったところでホイッスルがなる。10番の札を構えて立つ山口と日向とが入れ替わって、山口はサーブの構えに入った。
ひとつ息をついて、ぐっと集中した様子を見せる山口。青城のときのような過度な緊張を見られないし、むしろ落ち着いている。
「ナイッサー、山口くん!」
「ナイッサー。」
Aや月島の声を受けて、山口はサーブトスをあげた。
「(サーブトス、いい。助走もいい感じ。)」
手元に落ちてきたボールを叩き、前方へ放つ。ジャンプフローター特有の無回転で不規則な動きをしながら、ボールはぐんぐんすすんでいった。それに急いで飛びついたのは五色だった。拾われはするも、乱すことに成功する。
乱れた状況を託すように、牛島にトスが上げられる。乱れた時点でそれは予測済みで、烏野は3枚でブロックに臨む。
――しかし、ブロックをものともせず牛島はスパイクを放った。轟音を立ててボールはコートにたたきつけられる。牛島のスパイクは毎回選手達の流れと精神を断ち切る。速いうちに止めてしまわなくては、じわじわと効いてくるはずだ。
「ばっきばっき〜に折〜れ!何をっ?心をだよ〜」
そんな妙な歌声が聞こえたが間違いなく天童だろう。その趣味の悪さに苦笑いしつつ、烏養さんと声をかけた。
「あぁ、分かってる。先生。」
「はい!」
ここで烏野がタイムアウトを入れた。
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タイムアウト中、月島がいつになく集中しているようだった。その様子に驚いていれば、話が終わってから月島に話しかけられた。
「ねぇ、3枚ブロックのタイミング、僕が皆に指示出してもいいの?」
「……もちろん。」
「分かった。」
短い会話では会ったが、その目に宿った闘志は今までの彼からは考え難いものだった。
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蘭(プロフ) - 雨音が響いていますね切ないっ! (2020年5月20日 19時) (レス) id: 6b8ac95e5a (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - 228羽から239羽になっています その後も240羽〜になっています (2019年7月28日 17時) (レス) id: 429426fee2 (このIDを非表示/違反報告)
kusareneko11(プロフ) - 天童の童が道になってますよ (2018年1月23日 21時) (レス) id: 82b0fa55d3 (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - Kitty*.。さん» 貴方様のコメントを受けて「可笑しいのか!?」と思って調べたところ真骨頂が正解でありました…!申し訳ないです!真骨頂の意味は最もいい状態みたいな感じです! (2016年12月29日 11時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
Kitty*.。(プロフ) - 216羽に最骨頂という言葉が出てきましたが、意味を教えてください (2016年12月27日 20時) (レス) id: 73d00c2580 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2016年10月8日 22時