第212話 ページ12
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強気の宣言を見せたとおり、亜久津はアマデウスを圧倒するプレーを見せる。無意識の中で5つの攻撃パターンを生み出し、直前まで何処へ打つか分からない亜久津のプレーはいくらプロといえどそう簡単に見抜けるものではないらしく、またもアマデウスは得点を許した。
これで日本のアドバンテージ、あと1ポイントで1ゲームを取ることができる。
少し顔つきの変わったアマデウスがサーブを打つ。亜久津が返したボールを更に返して、集中して攻撃パターンを読もうとする姿勢が見て取れた。亜久津の目に意識が宿る一瞬を見極めるつもりらしい。
「見つけたぞ。」と、そっと呟かれたその言葉を証明するように、アマデウスは攻撃パターンを読みきってボールを返球してみせた。
「悔しくば俺から1ゲーム奪ってみろ!!」
「上等じゃねーの!!」
目の前で繰り広げられる壮絶な2人のラリー。無没識でアマデウスを翻弄する亜久津と、ギアをあげて集中状態を保ち続けプロの威厳を見せるアマデウス。2人のラリーは実に1時間にも及んだ。
あまりに長すぎるラリーに会場の空気は張り詰めている。そんな中、Aはじっと試合を見ているうちにあることに気づいた。
「亜久津くんのシューズって赤色じゃ……なかった、ですよね。」
「……ああ。」
短く返した徳川の声色には僅かながらの緊張感が窺えた。無没識は5つもの攻撃パターンを見せている。相手はプロ、そして1時間という長いラリー……足への負担は相当だろう。
けれどアマデウスも無没識の攻撃を見抜くために相当な集中力を要しているはず。それが1時間も続いているあたり流石はプロといえるが、精神力に限界が来ても可笑しくはない。
つまりもはやこの試合は亜久津の体とアマデウスの精神、どちらが先に限界を迎えるかの勝負なのだ。
「何度やっても俺にその無没識は通用しないぞ!」
「俺に……指図すんじゃねぇーっ!!!」
そう叫んだ亜久津がボールを捉える。5つのパターンを見破ろうとしたアマデウスだったが、予想外の事態に目を見開いた。――そこにあったのうは6つの攻撃パターン。
亜久津は端から6つまで見せることが可能だった、それをしなかったのは5つが限界と思わせるため。1ゲームを取るためにアマデウスを騙していたのだ。
それに気づいたアマデウスが「ビョードーイン!」とベンチの平等院に叫ぶ。
「いい選手を育てたな。」
そう言ったアマデウスが見せたのは闇を打つ構えだった。
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紗菜 - アニメがまた、スタートするのでこちらも更新されるのをお待ちしています。 (2月15日 19時) (レス) id: c2a2213ca9 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき - 続きが楽しみです (2021年9月22日 0時) (レス) id: 09253d858e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 素晴らしい作品!夢主ちゃん格好可愛いすぎます! (2021年1月3日 15時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
巫和泉(プロフ) - コメント失礼します!読んでいて,とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年1月4日 18時) (レス) id: c314aa38cf (このIDを非表示/違反報告)
白雪(プロフ) - 更新待ってます!続きが楽しみです。 (2019年11月7日 8時) (レス) id: 567a821487 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2019年3月18日 0時