【刀剣乱舞】 もう逢えない物語 【薄桜鬼】

第二十二話 ページ25

僕はその瞬間、部屋を飛び出ていた。

土方さんたちが僕の名前を呼んでいたが気にしない。





涙を必死で隠しながら、血で汚れた着物も直さず、ただひたすら京の町を走った。







(ひどい…っ！酷い、酷い…ッ………あんまりだ…ッ…！！)








怒りと悲しみと失望が体を駆け巡った。


大好きだった元主が、あんな風に言ってのけるなんて思わなかった。

壊れた刀は使い物にならない。だから捨てる。そんなのわかってた。




なのに、なのに――――――――――――。









『捨てたに決まってるじゃない』









あの一言が、どうしても納得いかなかった。









今更あそこへは戻れない。でも、戻らなきゃ、僕の住むところはなくなってしまう。この時代の夜は危険すぎる。


そんな複雑な思いが、今の僕の胸の内にはあった。




(それどころか…羅刹の存在を知っている僕は、きっとすぐにでも追手がくるだろうから。)






どれだけ逃げても、どれだけ走っても、僕は屯所へと連れ戻されるだろう。

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