嫌 ページ13
「Aさん、そんなとこで泣いとったら......、風邪を引いてしまうやろ。泣くならベッドの中で泣けばええやろ。」
「き、北さっ、え、今名前で呼びました!?というよりまだ起きてはったんですか....」
「Aさんって呼んじゃあかんかったか?」
いいですよ、と目を擦りながら答える。しかし、目は擦ったらアカンと両手を繋がされて、北さんの視線に捕まる。
北さんの目は透き通っていて、ガラス玉のように美しかった。でもどこか揺れているその瞳。それはあまりにも私には不似合い過ぎて、見ていたくなかった。
「こっち向き...。あんな、Aさん。別にまだ泣いててええねん、会いたいって言ってもええ。やけど、それは俺が隣にいても言って欲しい。.....なんか、一緒の部屋おっても、どこかAさんだけ、いないねん」
「いや、あの。さっきから常識ハズレな事言ってますけど気付いてますか、北さん」
「重々承知しとる上で言ってる。....夫婦間に隠し事は無しやで。ほら寝室で聞いたるで、はよ行くで」
寝室の箱ティッシュ数枚にお世話になりつつ、もう一回泣いた。
「侑って言うんです、大学入った時からずっと今まで仲良うしてきて、もうすぐ結婚とか、考えとったんです」
「おん、そこに俺が入ってきたと。これまた偉い事になったなぁ」
「きっと侑がいなかったら、すんなり北さんと結婚してたと思うんです。でも、私やっぱり侑が好きで、今すぐにでも会いに行きたいって思ってるくらい好きで....。でも、今私の事呆れて怒っとるかも知れんし、会いたいけど会えんって、辛いですね」
ベッドに背中合わせに寝っ転がっての会話。
北さんはもぞもぞ動きながら、静かにこう言った。
"Aさんの言う侑って奴が、どんなやつかは分からへんけど、きっと侑はAの事怒ってるで。"
え、そこは嘘でも怒ってないと思うって言うやろ。
と、布団を吹っ飛ばしてツッコんでしまった。
北さんは平然と私をベッドに引き倒し、また布団を被せて話始めた。
「別に、嫌いになるとかで怒ってる訳やないと思うで。侑はきっと、Aさんが頼ってくれへんかった未熟な己に怒っとるで」
「そんなもんですか」
「男なんて、大体そんなもんやで」
その晩は新しい環境に慣れず寝付きが悪かったのと、胸が苦しくて眠りが浅かった。
いつもより少し硬めのベッド
いつもより甘く暖かい香りの柔軟剤
侑より少し小柄な北さんがいる
私に、今どれだけ宮侑が残ってるだろうか。
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狼 - 三角関係ってやつですねぇ…ヤバイですねぇいいですねぇ←(さいてi (2020年3月20日 21時) (レス) id: 58dc9d80b9 (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - ありがとうございます!!自分の中でもいかに北さんが喜ぶハッピーエンドというのが難題でした!最初から読んでいただけてるなんて、本当に光栄です。よろしければ少ないですが、小話と次作も読んでいただけると嬉しいです!! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 紫乃さん» ありがとうございます、めちゃくちゃうれしいです。当方本当に語彙がないので、国語辞書を片手に執筆したかいがありました! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます。どうしてもここまで北さんについて深く掘り下げると、肩を持ちたくなりますよね!!小話では北さんに救われるよう書くので、楽しんでいただけたらと思います。 (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
猫太郎丸 - 完結おめでとうございます!!!初投稿されたときからずっと見てた作品で毎回ムズきゅんされました…!侑くんも北さんも報われてほしくてでも作者さんの完結方法はとてもスッキリして今とても爽やかです!(?)改めまして本当におめでとうございます! (2020年3月7日 22時) (レス) id: 3db7769967 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本郷ゆい | 作者ホームページ:http://nanos.jp/honngoyui/
作成日時:2019年11月11日 22時