* 白布 賢二郎 ページ6
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『さむいいい』
「恥ずかしいから黙って歩いて」
正面からびゅううっと風が吹く。
乱れた前髪を直しながらマフラーに顔を埋めてポッケに手を突っ込む。
賢二郎と買い物に出てきたものの、こんなに寒いなんて聞いてない。すぐにでも帰りたい。
「…マフラー落ちてる」
『あーごめん』
ただ巻き付けているだけのマフラーの端がだらんと肩のあたりにずれ落ちる。
隣を歩く賢二郎が首の後ろまで引っ張って直してくれた。
『今日晩ごはん何にする?』
「寒いしシチューとか?」
『え、いいね!しらす入れる?』
「シチューに合うわけないだろ」
あははー、と笑うと呆れたように先を急ぐ賢二郎。
つれないなあってむくれているとまた強風が私を襲った。
『さむい、しんじゃう』
「…A、またマフラー落ちてる。結んどけよ」
『うぇ?うーん』
ポッケから手を出して首の後ろに回す。マフラーの端に手が届かなくて上手く結べない。
見かねた賢二郎がため息をつきながら 後ろに回ってマフラーを結んでくれた。
「…ほら」
『ありがと、けんじろ』
すっかり冷えてしまった手をまたポッケに突っ込む。手袋持ってくればよかったな。
「…なあ」
『なにー?』
マフラーに顔を埋めている賢二郎の顔は 寒いからかほんの少し赤くなっている。
私からふいっと目線を逸らして、左手をこちらに差し出しながら小さい声でこう言った。
「…手、こっち」
『…え、』
私がわからずに戸惑っていると あーもうってちょっといらついたように私の右手を強引にポケットから出して、賢二郎の左手に絡める。
『…手繋ぎたかったの?』
「うるせ、悪いかよ」
『んーん、悪くない』
繋がれた手が賢二郎のコートのポケットに入れられる。
いつもは私の手が冷たすぎて繋いでくれないのに、珍しくてなんだか顔がにやけてしまう。
「にやにやすんな」
『してないもん』
私はまたマフラーに顔を埋めて 歩幅が少し小さくなった賢二郎の隣を歩いた。
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( こんなに寒いのに もう少し外を歩いていたいとか )
( 我ながら馬鹿みたいだ )
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しもこ - ごめんなさい書くところ間違えました (2020年5月22日 1時) (レス) id: 242f11c553 (このIDを非表示/違反報告)
しもこ - 可能なら角名くんお願いします!好きです (2020年5月22日 1時) (レス) id: 242f11c553 (このIDを非表示/違反報告)
ところねん - あああ北さんやばいようううう (2020年5月16日 2時) (レス) id: 60873799bf (このIDを非表示/違反報告)
。 - もし可能でしたら、照島くんお待ちしてます... (2020年2月16日 13時) (レス) id: 677789c7e1 (このIDを非表示/違反報告)
ジンベエザメ - いやー青春だねぇ…甘酸っぱ リクエストで古森くんできますかね?井闥山の (2020年2月16日 13時) (レス) id: b58d786d51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月埜 | 作成日時:2019年10月18日 21時