ゆるやかな坂 (ページ9)

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藤「はい、ココア」

北「ありがと…」

鍋食べて風呂入って
あったまったけどモヤモヤがなくなるわけもなく

ソファに膝抱えて座ってテレビ見てたら
風呂から上がった藤ヶ谷がココアをいれてくれた

藤「…大倉くんと何かあった？」

北「えっいや……別に…」

心配そうに俺を見て首を傾げた藤ヶ谷

俺が落ち込んでるのは
それが原因だと思っているのだろう

北「大倉とは何もないよ」

藤「そっか」

藤ヶ谷がね、

北「うん」

欲しいから苦しいんだよ

優しいココアは少しシナモンが香る

藤「……無理に、話せとは言わないけど北山が
俺の知らないとこで傷付いてるとか、嫌だよ」

優しい言葉を言って貰える親友の俺と
藤ヶ谷を好きな俺は全然違う人で

まるで他人事みたいに聞いている

北「…俺ら、もう大学生だよ。
お互い知らないことなんてない方が変だよ」

藤「……」

藤ヶ谷を好きな俺はもう、親友の俺に疲れてる

北「…心配してくれてありがとうな、おやすみ」

飲みかけのココアをローテーブルに置き
ソファから立ち上がれば

藤ヶ谷が俺の腕を掴み引き止めた

その目をみて、藤ヶ谷を傷付けたと自覚した

北「ごめ…」

謝ろうと口を開くと
藤ヶ谷の腕が俺の首に回された

北「あつっ……！」

マグが揺れて
藤ヶ谷の手に持つココアが少し俺にかかった

でも藤ヶ谷は何も気に留めない

北「ふじ、がや…？//」

藤「…」

変に近い距離に驚いて思わず逃げようとしたけど
藤ヶ谷の力は強く、腰が引けてる変な姿勢に

北「おい、何…っ//」

目を合わせられなくて視線を逸らしたのに
気付いたら、藤ヶ谷との距離はゼロになってて

北「っ……」

口の中にカカオとシナモンの香りがした

藤「……だめだよ」

北「なに、が………」

何故か少し怒った口調の藤ヶ谷

藤「俺の知らないとこに行っちゃダメ」

頭がついていけなくて
ただキスされたってことだけは分かって

全身が熱くなった

北「意味分かんなっ…////」

藤「……付き合おうか、北山」

北「は！？////」

ずっと望んでたセリフ
なのに何か違う

藤「恋愛とか1番北山の知らないとこだし…」

何か違うよ

藤「幼馴染じゃない北山、教えてよ」

俺の気持ちを知らないくせに
藤ヶ谷は、俺が藤ヶ谷に何されても

藤「ひろからもキスして？」

拒めないことを知っている