episode４７ ページ49
「私、もう泉に恋するのやめるから」
さくらがそう言い、私は困惑した。
少し切なさを帯びた笑顔を浮かべて、彼女が続ける。
「だからAに言っておいてよ。"ごめん"って。
……私が直接謝るべきなんだろうけど、散々迷惑かけちゃったから会いにくいし」
私は黙ってうなずいた。
Aを傷つけたことは許せないけれど、彼女も反省しているようだし、伝えてあげるのがこの場に居合わした私の義務だとすら思った。
「泉のことは大好きだし、結婚したい！ とか思ってばっかだったんだけど。やっぱり本人が幸せになるのが一番だよね」
さくらは今にも泣きだしそうだった。
潤った瞳に月の光が反射してきらきらしているけれど、声は震えている。
「だってさ……見てよ、あっち」
彼女が指さす方を見る。
私は思わず目を見開いた。
Aと、恐らくせないず──いや、瀬名泉が唇を重ねていた。
「好きな人が選んだ人だもん。……悔しいけど、二人を見守るしかないよ」
泣きそうだった彼女が、ついに涙をこぼした。
どうしたものかと思ったけれど、そっと彼女の背中をさする。
「あーあ……結局こうなっちゃうんだよ。最初から叶わなかったんだよ……っ。
ずっと、好きでも、意味なんてなかった……っ！」
吐き捨てるように泣きじゃくるさくらに、私はあまり刺激しないよう気を遣いながら声をかけた。
「意味ないことなんてないよ。害悪行為してたあんたが、今は相手の幸せ願ってるし……成長してるっていうかなんていうか……」
うまく、言葉が見つからない。
嗚咽を繰り返すさくらに、今かける言葉は何が適切なのだろうか。
「恋じゃなくて、愛に変わったんじゃないかな」
はっとしたようなさくら。
すっと視線を逸らされたけれど、
「……なにそれ。少女漫画みたい──なんて、前の私なら言ってただろうなぁ」
涙を拭って、へへ、と笑った。
「恋じゃなくて愛……。
そっか、そうかもしれないね。私は泉のこと──愛してるんだ」
ちょっと気持ち軽くなったよ、とさくら。
その言葉を聞けてほっとする。
「はいはい、もう帰った帰った。若い女の子が夜遅くまで外歩いてるもんじゃないよ」
「あんたも人のこと言えないでしょ」
相変わらずつっけんどんな言い方だったけれど、さくらはすっきりしたような表情をしていた。
「しばらくは失恋引きずるかもだけど……ま、いっか。じゃあね〜」
立ち去るさくらの背中を見て、ほっと胸をなでおろす。
好きとか嫌いだとか、恋とか愛だとか。
私にはまだ、少しだけ難しい。
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咲愛(プロフ) - ﾂｷさん» コメントありがとうございます！始まった頃から読んでいただけているとは、大変うれしいです！続きは本日中に公開出来たらと思ってますので、ぜひぜひ今後ともよろしくお願いします！ (2023年2月22日 16時) (
レス) id: 8b89f62398 (このIDを非表示/違反報告)
ﾂｷ(プロフ) - この作品が始まった頃から楽しく読ませて頂いてます！毎日更新が楽しみで素敵な作品に出会えたなと思いました！続き楽しみに待ってます！ (2023年2月21日 22時) (レス) @page50 id: 56454ebf31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲愛 | 作成日時：2023年1月27日 12時
