episode４３ ページ45
仕事でメイド姿のAに会ったとき、どこかで会ったことがある気がした。
そう、泉くんが言う。
あまりの出来事に私は放心状態で、あまり内容が入ってこないけれど、必死になって理解しようとする。
推しが、大好きな人が、泉くんが、初めて恋に堕ちたのが私で、今、キスをした。
状況を整理しようとすればするほど意味が分からない。
幸せ過ぎて、今にも消えてしまいそうだ。
「でも、そのときは"あのときの子"とAは全く結びつかなかった。改めてみたら面影はあるけどねぇ……」
A、きれいになってるからさ。
今日の泉くんは、私が喜ぶ言動ばかりを投げかけてくれる。
なんてことない日常が、あっというまに彼によって鮮やかに塗り替えられていく。
「この前、Knightsはドームツアーしたんだけど、」
「全通しました」
「ちゃんとファンじゃん」
食い入るように、反射的に言った言葉に、微笑みで返してくれる。
嫌味な感じはまったくない。
そのドームツアーは少し前に行われていたけれど、今でも昨日のことのように思い出せる。
私は全部の公演を見に行ったけれど、どれも二階席で確定ファンサはもらえず、でもその空間にいるだけで充分満たされるライブだった。
中でも、泉くんが投げキッスをした瞬間、会場が壊れてしまうのではないか、というくらい歓喜の悲鳴が響き渡ったときのことを、特に鮮明に覚えている。
「で、そのツアーのあと、ある人に会って、その人にAの話を聞いたの。
"あのときの子"とAが俺の中で結びついて、無意識に会いに来ちゃって……ごめん」
泉くんは何に対するものかわからない謝罪をしていた。
私にとっては、会いに来てくれたことも、昔から想っていてくれたという事実も、どれもうれしくて、幸せなことなのに。
「だから、俺とAは、アイドルとファンっていう関係もあるかもしれないけど、それ以前に俺はあんたのことが好き、で……」
みるみるうちに彼の頬が赤く染まっていく。
先程までの余裕そうな素振りは微塵もない。
「──もう会えないなんて、言わないでほしい」
絞り出すような、少し震えた声。
気高き騎士とは程遠かったけれど、そんなところを踏まえても、間違いなく世界で一番彼がきれいだ。
「それから……返事、期待してるから」
最後にまた美しい笑みを浮かべて、「じゃ」と去っていった。
一人残された私は茫然としてしまう。
この短時間で、いろいろなことがあった。
返事──告白の返事、ということだろうか。
もしそうだとしたら、リアコではない私にとって、非常に難しい問題だ。
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咲愛(プロフ) - ﾂｷさん» コメントありがとうございます！始まった頃から読んでいただけているとは、大変うれしいです！続きは本日中に公開出来たらと思ってますので、ぜひぜひ今後ともよろしくお願いします！ (2023年2月22日 16時) (
レス) id: 8b89f62398 (このIDを非表示/違反報告)
ﾂｷ(プロフ) - この作品が始まった頃から楽しく読ませて頂いてます！毎日更新が楽しみで素敵な作品に出会えたなと思いました！続き楽しみに待ってます！ (2023年2月21日 22時) (レス) @page50 id: 56454ebf31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲愛 | 作成日時：2023年1月27日 12時
