柊の咲く頃に ページ9
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「夢ノ咲学院…?」
「そう、そこに行くから」
小さい頃からずっと一緒だった泉の口から初めて夢を聞いたのはこの時が初めてだった
「アイドルになる」
てっきりモデルの仕事を続けるのだと思っていたから衝撃を受けた
このまま泉はモデルを続けて、私と同じ地元の高校に進学するんだと、そう信じていた
「アイドルは恋愛はご法度だからさ」
「うん…」
その先は、聞きたくない
私と泉は付き合ってる訳じゃ無い
あえてこの関係に名前を付けるとしたら〈幼馴染〉だ
「俺はAと付き合ってないけど、友達だとも思ってない」
ハッキリ、好きだと言ってくれないんだね
アイドルを目指すと言う泉に、私からこの想いを伝えることも出来ない
「俺が一人前のアイドルになって世間から認められるようになったら、またこの丘で会おう」
「…うん」
「それまでは、サヨナラA」
この丘は私と泉が小さい頃から遊んでいた、小高くて街一面が見渡せる2人だけの秘密の場所
柊の甘い香りが私を優しく包んで、誰からも見られないこの丘で少しだけ泣いた
_________それから何年経っただろう
待つのは得意じゃないから、年数を数えることをやめた
私は毎年、泉の誕生日に約束を交わした丘で一日を過ごすことが恒例になった
泉の誕生日に会う、という約束はしてないのだけど
何となく、この日だと思っていたから
別れを告げられた時の香り、柊の花の香りが
泉との約束を思い出させてくれる
アイドルでは無い、誰も知らない
私だけの泉との約束を
「今年はいつもより寒いなぁ…」
11月に入ったばかりだというのに、もう息が白い
例年より寒いと天気予報士が言っていた
そのため、布団から出るのを躊躇してしまい時刻はもうすぐ昼になる
少しだけど早足で丘を登っていく
「ちょっとぉ、遅いんですけど」
「え…?」
丘の頂上にあるベンチには、少しだけ鼻を赤くした泉が座っていた
私の中で泉が来ると期待しない事にしていたし、泉が居ない事が当たり前となっていた
「い、ずみ…?なんで、」
「遅かったのは俺も同じか、お待たせA」
「遅すぎだよ、ばか…」
「ねぇ、他に言うこと無いの?」
やっと、伝えられるんだね
「お誕生日おめでとう、泉。大好き」
「俺も、好きだよA。」
何年も待ち焦がれた
この想いを貴方に
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作者名:あんさんぶるParty! x他3人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2017年10月31日 20時