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彼、瀬名泉と出会った春。とてもちっぽけな、一世一代の出会いだったのだ。はじめて彼を奥から見つめたとき、その瞳に映りたいと思った。彼の色に染まりたいとすら思った。春は出会いの季節で別れの季節だといつか先輩の言葉を思い出して、期待した。
優しさを知った夏。初めて彼の腕に包まれた夏。その優しさは心地よくて 無意識に溢れた涙を彼は「馬鹿じゃないの」と拭ってくれた。雑な優しさが嬉しかったのだ。彼らしい、笑顔は涙の跡を消した。
初めて彼の弱さを知った秋。紅葉に染まったその季節、はじめて彼は今の仕事で失敗を繰り返した。なんてことない、という慰めも 次頑張ろう、という気晴らしも消毒にすらならずに。多忙な毎日の中でストレスを抱えながら生きた彼がはじめて、泣いた。
想いを晴らした冬。寒さで凍える手先を彼が温めてくれたクリスマス。赤くなった鼻先、震える声、すべてが新鮮で。彼の背中は大きくて熱かった。一生幸せにするとかこれから一緒にいようとかそんな言葉なんていらなくて、「明日も隣にいてほしい」。
年月はあっという間に過ぎていく。仕事の都合で会えなくなる日が続いて、同棲をはじめた。勿論 喧嘩も多いし躓くことばかりで嫌になることもある。でも、自然と彼の隣にいるだけで私は笑っていられる。そんな私を見て「チョーうざい、全く」なんてそっぽ向く彼を見る、瞬間に幸せを感じるような私は安っぽい人間だ。
「泉、おめでとう」
「……早く寝なよ」
「朝起きたら、いなくなってそうで」
言うタイミングが無くなりそうで。私の伸ばした手を泉は握る。
ちゃんとここにいると暗示されているようで安心してしまう。
この空間がとても心地よい。すきだ そう実感した。
「朝になったら泉のすきなエビカツサンド作ってあげるね、それから美味しいココアも淹れてあげる」
「それは期待しないで待っておく」
「それから映画を借りてふたりで見ようよ。その後は久しぶりに出かけよう。遠出はできないけどさ」
泉は はいはい、と私の頬に触れる。
「じゃあ、早く朝にならないとね」
朝になっても一緒にいれる。そんな関係が いちばんの幸福だ。
「おめでとう、泉」
．
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作者名：あんさんぶるParty！ x他3人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2017年10月31日 20時
