ハードボイルド女子 ページ5
気づいてる。
私はあまりにも猪突猛進型だ。
何でもやりすぎてしまうのは私の悪いところ。
仕事をやめて、派遣に登録した。
疲れきってた私は誰とも関わらず、言われたデータ入力だけをすることに決めた。
その間、普通の女子になろうと、普通の女子が興味のあることを勉強した。
占いの本とかメイクの雑誌とか。
美味しい流行りの食べ物やSNSのこととか。
少年漫画読んでる場合じゃない。
お兄ちゃんが買ってる少年漫画やラノベや、古本屋で買ってくる本を借りて読むせいで知識が深夜アニメ番組向けに偏ってる。
これじゃあだめだ。
そう思ってファッション雑誌を読んで、今度はヘアーやメイクやカラーアドバイザーや骨格で似合う服を勉強し始めた。
ふむふむなるほど。
人気のある女優さんを見て、メイクを真似したりしてみた。
あの容姿を保つためにかなり筋トレとかしてると聞いて納得した。
なるほど。
美人は美人でい続けるために努力してるよね。
私も筋トレを始めてみよう。
更に。派遣先の職場で人気のある女の子を研究した。
髪から爪先まで気にかけて良い匂いがしていつもニコニコしてる。
でもあの子実は中身ハードボイルドだよね。
人から向けられる悪意をガン無視してみんな大好きって顔して笑ってるの怖い。
精神的にも肉体的にもタフだし、出る杭は打たれることを知ってるのか自分を殺すことができる。いろんな意味で殺し屋だ。
「麻倉さん、ランチ行きません？」
派遣にまで優しい。その笑顔の下の、腹の底は何を考えているのかわからない。
派遣にまで優しいなぁ、って好感度上げるつもりなのかしら。
「お誘いありがとうございます……でも」
「？」
「一人が好きなので」
彼女は私をじっと見下ろして、私にだけ聞こえるように言った。
「……麻倉さん羨ましい」
「……え、どこが……」
「私だって一人が好き。家に帰ったらすっぴんで暗い部屋でテレビ見ながらカップ麺啜ってる、その時間が一番幸せ」
「……え」
「また今度ランチ行こうね」
うわぉ。ハードボイルドだ。
強い。勝てる気がしない。
彼女は演じてるんだ、女優だ。
彼女にとって会社は舞台、ドラマの中なんだ。
モブにも声をかける宿命を背負った彼女の苦悩は計り知れない。
せめて彼女が幸せになれますようにと祈りながら派遣の契約を終え、更新しなかった。
沢山の知識で頭でっかちになった私の次の職場はサクラグループ。
係長目前で降りた、前職のライバル会社だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2803人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
susakinyanko(プロフ) - 駅前のハトがツボ過ぎます。死ぬかと思った笑 (12月15日 15時) (
レス) @page41 id: 9ec95cf02d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 面白い！眠気がとんだよー！よしのさん好き(^^) (2020年1月30日 10時) (レス) id: 12e1cc5b48 (このIDを非表示/違反報告)
花乃(プロフ) - こんにちは。やっぱりよしのさんのお話好きだー！！と叫ばせていただきます(*´∇｀*) (2020年1月26日 17時) (レス) id: 95a7b7882e (このIDを非表示/違反報告)
ちこ(プロフ) - こんにちは。よしのさんの新作ですね。ゴルゴの回まで一気読みしてしまいました。とっても楽しいです！更新楽しみにしています。 (2020年1月16日 16時) (レス) id: c3adc4cd0a (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - もう、さすがの一言です。やっぱり面白すぎます！最高です！ (2020年1月16日 1時) (レス) id: 586c2240fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年1月6日 0時
