過保護王子 ページ20
「ねぇ、連絡先、教えてもらっていい？」
お店を出た櫻井さんがそう言ってきた。
「え……連絡先……」
どうせ飽きたら連絡してこないんでしょ？
というやさぐれた私が顔を出してしまう。
それに気づいてしまう櫻井さん。
「嫌だよね……ごめん」
あー……落ち込んでる！
「毎朝会いますし、連絡先なんか必要ないんじゃないかなとつい思っただけです、ごめんなさい！嫌じゃありません」
「でも、そういう連絡先ホイホイ渡さない奥ゆかしいところ、素敵だなぁと思うよ」
……なんでこんなに私をいい方いい方に捉えてくれるんだこの人は。
「ラインでいいですか？」
「勿論。電話番号も聞いていい？悪用しないから」
「……」
悪用するのは私の方だよね？
御曹司の携帯番号五万くらいで売れそう。
なんつって。
櫻井さんが嬉しそうに私の連絡先をスマホに登録して、なんだか変なスタンプを押してきた。
「……あは」
「あ、知ってる？」
「お兄ちゃんと同じ」
「お兄さんがいるんだ」
「はい。えっと、駅はこっちでしたね」
駅の方に向かって歩いていこうとしたら櫻井さんが私の手首を掴んだ。
「待って」
「ん？」
「タクシー。乗って帰りなよ」
「いえいえ、ここからだと結構ありますし電車もまだあるので大丈……」
「俺が心配だから言ってるんだけど。ほら、こっち」
ホテルの前で待ってるタクシー乗り場の方に歩いていく。
「えー、過保護……」
「過保護です、こんな時間に可愛い子を一人で帰すわけに行きません」
なんだよう、腹立ってきた。
この人の彼女になったら絶対幸せだぞ。
「可愛くないですよぉ……嘘つき……」
「これは嘘じゃねぇ、マジで言ってる、可愛い。だから……」
……あれ？
今何か、口調が。
あれ？
櫻井さんがまたふわんと笑った。
「帰ったらラインしてね。俺はタクシーの運転手さんすら信用してない男だからね」
「えー、そんな疑い深いんですか？」
「うん」
櫻井さんがタクシーの運転手さんに何か話しかけて私を乗り込ませた。
「じゃあね、おやすみ」
櫻井さんがブンブン手を振った。
笑いながら手を振る。
車が走り出して、なんとなく振り返ってみた。
やだ、私恋してるみた……
……ん？
櫻井さんがネクタイをぐいっ、と緩めてる姿が目に入った。
タバコを口にくわえる。ライターの火で表情が少し見えた。
眉間に、シワ。
ふう、と煙を吐き出して、歩き出す。
見てはいけないものを見た気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2803人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
susakinyanko(プロフ) - 駅前のハトがツボ過ぎます。死ぬかと思った笑 (12月15日 15時) (
レス) @page41 id: 9ec95cf02d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 面白い！眠気がとんだよー！よしのさん好き(^^) (2020年1月30日 10時) (レス) id: 12e1cc5b48 (このIDを非表示/違反報告)
花乃(プロフ) - こんにちは。やっぱりよしのさんのお話好きだー！！と叫ばせていただきます(*´∇｀*) (2020年1月26日 17時) (レス) id: 95a7b7882e (このIDを非表示/違反報告)
ちこ(プロフ) - こんにちは。よしのさんの新作ですね。ゴルゴの回まで一気読みしてしまいました。とっても楽しいです！更新楽しみにしています。 (2020年1月16日 16時) (レス) id: c3adc4cd0a (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - もう、さすがの一言です。やっぱり面白すぎます！最高です！ (2020年1月16日 1時) (レス) id: 586c2240fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年1月6日 0時
