〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ35)

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「どう？」
相葉さんに聞かれた。

「……無理……櫻井さんの見た目の麗しさをこんなにめんどくさいって思ったことないくらい聞こえない」
「なんでいつも俺……」
櫻井さんがそうのたまった。

「いつも？」
「……」

返事してくれない。

「いつも？」
相葉さんに聞く。

「翔ちゃん男女問わずモテるの」

でもまぁちょっとわかる。
櫻井さんは最終的なところ、死ぬほど愛してくれる人を無視できないタイプの人だ。
そういう理由で絆される可能性を感じる。

唖然としていたら櫻井さんがはぁ、とため息を吐いた。

「お前が羨ましい」
「……」
「男女問わずモテるつらさを知らないなんて羨ましい、お断りするのも辛いんだぞ」
「ソウデスカ」

適当に返事してたら、大野さんと二宮さんが預けていた荷物を受け取って、みんなそれぞれ荷物を引き取った。

「ご案内しましょうか？送迎用のバスだしますか？」
河東さんがそう言った。

「お言葉に甘えようかな」
大野さんがそう言った。

ヤダー！って櫻井さんの声は無視することにした。聞こえてるのに無視したってことで私だけを睨んでくるのが腑に落ちない。

仕方なくバスで送ってもらうことにして、ついでに黒い影の正体のヒントを探ることにした。
櫻井さんは一番遠くに座ってて、役に立ちそうもないから私と大野さんで聴取することにした。

「河東さんは……いつからこちらでお勤めされていらっしゃるのですか？」
「若い頃に転職して今になりますので……30年くらいになりますね」
「入ったときから新館のほうで働いていらっしゃった？」
「ええ。そうです。旧館は何度か取り壊そうとしたり木の階段や扉を作り直したり床を補強したりしてたんですけど」
「そうみたいですね」
「でもね、これ噂ですけど……霊の祟りとかで取り壊しができへん」
「……信じていらっしゃる？」
「信じるも何も。ぼくも見てます」

大野さんと目を合わせる。
「なにを、みた？」
大野さんが河東さんに問いかける。

「何か物騒なものを持った男の霊です」
「何かされました？」
「いいえ。すぐ走って逃げましたから」
「何時くらい？真夜中？」
「夜でした、10時位」
「その時間になぜそこにいました？」
「たまたま警備の見回りと一緒にいまして」

「……それは本当に霊でしたか？」
大野さんが聞いた。

「……わかりません」
……余計なことは喋らんとこ。
……大野さんも美形やなぁ。

そう聞こえてきた。
ため息が出た。