い ページ34
その日はさんざんだった。
お客さんに連絡したら、連絡遅いよ、って怒られたり、お気に入りの靴のつま先に目立つ傷が入ったり、よく行くコンビニで買ってたお気に入りの炭酸飲料の取り扱いが終了してたり。
もうやだ。
泣きべそ。
定時もとうにすぎて営業部に戻ったら、同期の男たちがみんなで明日の練習してた。
同期みんないるのに二宮くんはいない。
デスクに戻って、残ったデスクワークを片付けてても、ちっともはかどらなくて。
明日は土曜で創立記念日で、会社に来なくちゃいけないのに仕事は休みだから、仕事残したくない。
でもやる気がでない。
デスクに頭を乗せて、電話かかってきた時用のメモに二宮くんの似顔絵を描いてみた。
結構似てるかも。
絵の下に二宮和也、って書いてみた。
名前と似顔絵を見てるだけで胸が苦しいとかどうなっちゃってるの、私。
病気かな。
名前の後に、病、といれてみる。
『二宮和也病』
なんてね、馬鹿だね。
症状は？
『症状：胸の痛み・涙目』
とかかな。うん。
『原因：』
好き、だからなんだろうなきっと。
好きをこじらせたことによる。
「Aちゃん」
相葉くんが話しかけてきた！
ハッ！これやばい！
慌てて字を消す！
好き、とか書いちゃってる！
ひいいいやああ！
んあっ！フリクションだと思い込んで消そうとしたら消えない！
慌ててメモをグシャって丸めた。
「ん？」
「んん？」
見つめ合う。
「どうした？」
「……何隠した？」
「なんにも？」
「……今、二宮って見えたけど？」
「気のせいだよ？」
ここで目を離しちゃ負けだ！
じー！
相葉くんが至近距離で、んーー？って近づいてきたけど！負けない！
相葉くんが私の手をガシッ！と掴んできた！
……っ！
「あら！なあに！」
「それ見せて！」
「それってなあに！」
「手に持ってるそれだよ！」
「何も持ってないよ！」
「持ってるよね！見えたよ！」
「何を？」
「好きって書いてたよね？」
「なんのこと？」
「みーせーて？」
「嫌！」
私の手を開こうとしてくる！
だめだ！こんなの見られたら！
「相葉さー……あ」
二宮くんの声がして、相葉くんがぱっと目を上げる。その隙にメモを握りしめたまま立ち上がる！逃げる！
「……帰る！」
「こら！Aちゃん！」
「お疲れ様！」
二宮くんが私を見てボソリと言った。
「恐怖症治ったんだ、このタイミングで」
「……」
「木下効果仕事しろ」
どういう意味？
二宮くんがため息を吐いた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
