おめでとう ページ45
「んもー……」
「もしかして怒った？」
「……」
「ごめんなさい」
涙をこらえてたら、二宮くんが私の頭をぽんと叩いた。
「お母さんに会うのはまた今度ね？フリフリ好きなお母さん会いたいけどね」
「……」
「新入社員の頃にさ」
「うん」
「研修で席の近くに座ってた子が俺の好みのタイプの女の子だったんだよね」
「……うん」
「明るくてちょっと天然で可愛くて……そしたら駅も近くみたいってこと知った。電車で見かけた。皆に優しい感じだった」
二宮くんと目が合う。
二宮くんが私の手をふんわり握った。
「けどね、俺の顔見たら逃げるんだよね、嫌われる理由なんてまだないから観察してみた。そしたら若い男が苦手っぽいことは分かった」
「……うん」
「勿体無い、残念だなぁ、なんて思ったけど、まぁいいやって諦めてた。けどここに来て、相葉さんが念願のチーフになって、俺に悩みを相談してきたの」
「……悩み」
「Aちゃんに嫌われてる、理由はわかんない。でも、澤部とはなかよしだし、原因不明だから謝れないし辛いって」
「……ごめんなさい……」
「理由探ってみようって思ったんだよね、最初はただの好奇心。芹香さんに俺は人の心にスルンと入りこむ才能があるって言われて」
「ああ、わかるよそれ」
「その才能、どこまで通用するかなって、そう言われて初めて、意識的に試してみたわけ」
「うん」
「すっげ簡単に落とせた、と思ったんだけど……なんかおかしい、なんか変。絶対ズレてる」
二宮くんがくすくす笑う。
「ん？」
「俺が男性に恋する心は乙女、ってことになってんだなーって気づいたらおっかしくて。気づいたら、余裕でハマってた、だってお前すげーいい子だもん、何より可愛いし」
「……」
「俺が下心満載の男って気づかれたらアウトじゃん？でもどんなに下心見せても全然気づかなくていつ気づくかなぁってゲーム感覚」
「……」
「木下の気持ちわかる、素直に泣いて怒って笑うAに構いたくて仕方なかったんだろうな……馬鹿だね……俺もだけどね」
二宮くんがハハ、と笑った。
「おれんちに来るって、いとも簡単に俺の罠にかかったA見てたら可哀想になってきて……」
「……罠」
「雑炊できた時……俺あの時起きてたんだよね」
「……え！」
「女の子家に呼んどいて寝れるわけ無いでしょ」
「……」
「俺はオトコって知って、起こしてくれたら脈アリ、そのまま帰ったらアウトっていう、賭けをした」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
